首相は元画家 アルバニア、型破りなリーダーシップでEU加盟へ前進

アルバニアの首都ティラナの事務所でインタビューに応じたエディ・ラマ首相(Photo by Shellie Karabell)


現代になると、ムッソリーニによる1939年の侵略によって立派な建造物が建てられ、イタリアとの文化的・財政的な関係もできた。独裁者エンベル・ホッジャの共産主義時代が終わった後は、福音主義者の布教活動でさまざまなプロテスタント派が浸透。現在は、バルカン諸国には珍しい平等主義を実現している。

それでも、これからの道のりは長い。アルバニアは地中海性気候で、山も海もあり(アドリア海・イオニア海沿いの海岸は約480キロにわたる)、ユネスコの世界遺産には3か所が登録されているものの、宿泊施設の数や質は十分ではなく、古代の階段や道には安全のため手すりの設置が必要だ。また、浜辺や田園地帯の清掃、効率的な輸送手段やアクセス経路の整備などもこれからだ。

隣国イタリアからの観光客は現在、フェリーを使ってアクセスできる。今後は欧州からの直行便も増える見込みだ。ラマによると、今夏には新たな国営航空会社「エアーアルバニア(Air Albania)」が操業を開始し、伊独英や隣国のバルカン諸国との間でのフライトが増便される予定。アルバニアはすでに、低予算の観光客や冒険好きの旅行客に一定の人気を得ており、2016年には400万人近くの訪問客があったとされる。


ユネスコの世界遺産に登録されているベラト城にある東方正教会の聖画像(Photo by Shellie Karabell)

EUの提示した条件を満たすのは難しかったが、アルバニアにとっては重要なことだった、とラマ。「(提示された条件は)国家建設や組織設立のロードマップとなり、アルバニアを整備する上で役に立っている。EUに加盟することが正しい道なのか、という問題ではない。これしか道は存在しないのだ」と語った。

国会で卵を投げつけられる

だがラマは、そのビジョンや努力にもかかわらず、300万人の全国民から支持されているわけではない。私が首都ティラナで、十数人のタクシー運転手と行商人に無作為に声をかけてアルバニアの現状について聞いたところ、いずれも似たような回答だった。政治は腐敗がまん延し、国民は多額の税金を払っているのにインフラは一向に改善されず、あらゆるものに資金を提供する米著名投資家のジョージ・ソロスが全てをコントロールしている──と。
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編集=遠藤宗生

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