ラマは休日の朝を、友人のアトリエで過ごしていた。2013年に首相に就任する前、最初のキャリアを画家とスタートさせた彼は、今でも1か月に一度はこうして絵を描いている。
首相として、汚職がはびこる欧州最貧国のアルバニアを暗黒時代から解放し、2025年に予定される欧州連合(EU)拡大の候補として、念願の加盟交渉にたどり着くまで国を率いるのは、並大抵のことではなかった。
欧州への道
アルバニアが正式にEU加盟を申請したのは2009年。加盟候補国の地位が与えられたのは2014年だ。EUは、加盟交渉を始める上での5つの主要条件を提示した。行政制度改革、司法制度改革、腐敗の撲滅、組織犯罪の撲滅(麻薬取引と大麻栽培の取り締まり)、そして人権の改善(少数派の保護と財産権の尊重など)だ。
これまでの取り組みは完遂にはほど遠いものの、実を結んでいる。欧州委員会は今週、アルバニアのEU加盟交渉の開始を勧告。全加盟国28か国がこの勧告に全会一致で合意すれば、6月末に加盟交渉が始まる予定だ。
合意は得られると強気に構えるラマは、今までの政府の功績を誇らしげに語った。「これまでに判事や検事の審査プロセスを制定し、17人を解任した。例えばある人物は、資産の出所が正当化できなかったため解任された」
また、EUから要請された改革の一環として、難民とホームレスの人々ための施設も開設。大麻栽培は取り締まりにより激減し、アグリツーリズムビジネスの開拓のため、農業による代替も少しずつ進んでいる。
観光産業への助成金
こうした取り組みが功を奏し、アルバニアにはEUと欧州復興開発銀行(EBRD)から共同で、観光産業開発と雇用創出のため4000万ユーロ(約53億円)の助成金を許可された。
アルバニアには、アグリツーリズムやレストラン産業以外にも多くの観光資源がある。同国の景色や伝統は何千年にもわたる人類の歴史と文明を反映しており、紀元前にアルバニアが海軍と貿易の開拓地だった時代の古代ギリシャ、ローマ帝国の都市や神殿、カトリック教会や正教会、トルコ風モスクなどが存在する。
アルバニア南西部にある古代都市アポロニアの遺跡(Photo by Vitmar Qinami, Albanian National Tourism Agency)