なぜ「ドローン前提社会」に人生を賭けて挑むのか?

ドローンファンドの千葉功太郎代表

3月24日発売、働き方について特集した「フォーブス ジャパン」5月号。テクノロジーの進歩によって多様な働き方が実現可能となった。時間、場所、お金、慣習──。既存の枠組みがディスラプションされた社会で、「自分らしい働き方」とは何なのか? 未来をつくるイノベーターと企業にそのヒントを探る。


「空の産業革命」とも言われるドローン・ビジネス。世界でも珍しいドローン・スタートアップ企業に特化したファンドを組成した千葉功太郎が大事にしている考えとは。

そう遠くない未来の都内の高層マンションの一室。海外に単身赴任している父親が、娘にビデオ通話で「誕生日おめでとう」と告げると同時に、ベランダにドローンがプレゼントを配送する。一日が終わろうとする時、最寄り駅から歩いて帰宅する母親をドローンが警護する──。

ドローンがインターネット端末として社会に普及し、人とモノと社会を結ぶ。千葉功太郎は、「ドローン前提社会」の実現のために2017年6月、ドローン関連スタートアップへの投資に特化した「DroneFund(ドローンファンド)」を立ち上げた。

「放っておいても到来する未来なのであれば、自分がつくり、到来した際は先頭に立っていた方が面白いに決まっている」

これが千葉の「働き方の哲学」を支えるひとつの指針と言える。千葉のこの哲学は、学生時代に見たインターネットの原風景に端を発している。千葉が1990年代の学生生活を過ごしたSFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)は、84年に研究用のコンピュータネットワーク「JUNET(Japan University NETwork)」に繋がれた大学のひとつ。この小さなネットワークが世界中のあらゆるコンピュータを接続し、後にインターネットと呼ばれるネットワークを形成してゆくダイナミズムを、千葉は教壇に立つインターネットの父・村井純から語られる言葉とともに感じていた。

卒業後、千葉は97年から99年にかけてモバイルインターネット端末の研究をリクルートで行う。「i-mode(アイモード)」、その開発が千葉にとって最初の「未来をつくる仕事」だった。

そんな千葉がいま、取り組む「未来をつくる仕事」はドローン前提社会における生態系(エコシステム)の構築だ。ドローン前提社会を実現するために圧倒的に足りていないものは投資なのだ。

「ドローン技術の目利きができ、未来の産業をイメージできる投資家が少ない。だからスタートアップにリスクマネーが流入しにくい状況が生まれています。しかし自分のポケットマネーだけではドローン産業を救えない。では僕が“銀行”になろうと思って始めたのがドローンファンドです」
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文=森旭彦 写真=宇佐美雅浩

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