ビジネス

2018.04.21 12:00

生まれ変わったらエンジニアに? シリコンバレーの転職事情


ますます熾烈になる人材獲得競争は世界へ

渡辺:シリコンバレーの会社は組織がフラットであるが故に、転職しないと職位も給料も上がりにくいということがある。

5年程前、グーグルやフェイスブックのエンジニアの大学出の初任給が株も入れると20万ドル超になって、それまで数年働いていた人たちと給料が逆転してしまう現象が起きた。

結局バランスを取るために社員全員の給料を上げることになって、ここ数年の技術系起業の給料のインフレには、目を見張るものがある。しかも、カリフォルニア州の新しい法律で、前職の給料を聞くことが違法になった。

また、企業側がジョブ・オファーを出す時に、そのポジションの給与幅を聞かれたら答えなければならない、という規則も加わった。従業員側が給与額の交渉をするのに有利な条件が増えたことになる。働く人から見た企業のレビューと求人情報が載っているGlassdoorというサイトを見ると給与相場が分かるが、このエリアで基本給が10万ドルを切るのは、本当に少ない。

奥本:グーグルやフェイスブックもシリコンバレー外にどんどんサテライトオフィスを作り、他の地域でのエンジニア採用に積極的。このサラリーインフレは、しばらく続く気がする。人材投資=R&Dへの先行投資という考え方だから。とはいえ、もはやシリコンバレーだけでは抱えきれないテクノロジー需要があるのが根本的な原因なので、他の地域に広がっていく可能性が大きい。

渡辺:とはいえ私は、シリコンバレーはとても特殊な場所で、第2のシリコンバレーはなかなか生まれないと思っている。5~10年のスパンで見るとリモートで働くということが普通になって、本社にたくさんの人が集まって働くという状態は減っていくと思う。そうしたらこの辺りに住む必要はない。

奥本:本当にそうだね。今でもシリコンバレー内でミーティングをする時でさえ、オンライン会議ソフト「Zoom」を使っていることが多い。特に目的がはっきりしている時は。相談事があるときは「コーヒーでも飲まない」となるけれど。

渡辺:恐らく将来的には、基本的には皆リモートで働いて、定期的にチームが物理的に一箇所に集まって接点を深める、という働き方が一般的になるのではないかと思う。現時点ではビザの問題があるから、シリコンバレー企業への転職はここに住んでいる人が有利だけど、リモート勤務が普通になったら世界中から採用ができる。

奥本:私もそう思う。アジェンダがはっきりしていることはビデオ会議でサクサク話し、親交を深めたいときにはオフィスに行く。オフィスにはカフェや遊技場はあるけれど、デスクがなくなる、という日が来るのではないかと思う。

渡辺:そうなると、今以上に厳しいプロ社会になる。オフィスは遊び場としてすごく楽しそうな見た目だが、仕事では毎日が真剣勝負。

奥本:世界に通用する専門的にスキルを身に付け研鑽していくことが、ジョブ・マーケットで活躍するために今よりももっと大切になると思う。

渡辺:今の小学生が就職する頃にはそういう社会になっているのか、と思うと親として考えさせられるわ。

連載:誰も知らないシリコンバレーの裏事情
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文=渡辺千賀、奥本直子

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