IT企業が自治体に社員を派遣 コーポレートフェローシップとは?

行政課題にもテクロノジーの活用を─メンタリングの様子(KOBE live+work提供)


この制度は、民間企業に勤めたまま、3か月間などの短い期間、週1回ほど自治体に派遣され、自治体職員と机を並べて働くスタイルをとる。企業側の研修プログラムと位置付けられており、自治体も人件費予算を出す必要がない。3か月間、地域住民を巻き込みながら課題解決を模索する。

企業にとっては社員の能力開発やキャリア形成に役立つと同時に、自治体と手を組んで新しい事業を始めるきっかけともなることから、「Yahoo!」や「NEC」など日本を代表するIT企業が参加し、2017年度は12自治体に18名が派遣された。

福島県会津若松市での成果

福島県会津若松市では、「会津バス」の路線改編や運賃設定の材料となる乗降調査の効率化をテーマに、民間企業から2名が派遣された。これまで紙上で集計されていた非効率な作業を見直し、乗降調査用のスマホアプリで一気に集計する仕組みを生み出した。

自治体側のメリットも明確だ。観光案内や子育て支援のアプリ開発や、子供からのいじめ相談をチャットで受けるサービスを開発するときには、自治体の担当部署が仕様書を作成して入札するのが普通だ。しかし、テクノロジーを十分に理解していなければ、適切な仕様書を作成するのは難しい。

コーポレートフェローシップでは、「VR(仮想現実)やAR(拡張現実)を活用した観光案内アプリ」といったざっくりとしたテーマを掲げて、専門人材を募ることができる。その結果、腕に自信のある人材が応募してくるので、自治体職員が最先端情報にもアクセスできることになる。

しかし、このプログラムにも課題はある。自治体と大手ITベンダーが組んだとしても、本当の意味でのイノベーションは起こらない。なぜなら日本の大企業は、既存サービスを受託型で売り込むのは得意だが、ゼロからサービスを創るのは苦手だからだ。

2018年に自社社員8人を自治体に送り込んだ「富士通株式会社」のデジタルフロント事業本部本部長代理の柴崎辰彦さんは、「コーポレートフェローシップ」の報告会で、次のように現時点での限界点を述べた。

「Code for Japanのプロジェクトでは、いままで世の中になかったサービスをつくることができた。しかし、これからは、ゼロからサービスを創る人材を、会社として育てる必要がある」

次回は、この問題を打開する手法として、ゼロから創り出すのが本業であるスタートアップとのコラボについて触れてみたい。

連載:地方発イノベーションの秘訣
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文・写真=多名部重則

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