IT企業が自治体に社員を派遣 コーポレートフェローシップとは?

行政課題にもテクロノジーの活用を─メンタリングの様子(KOBE live+work提供)

より良い市民サービスを提供するため、自治体でもテクノロジーとデータの活用が不可避な時代となってきた。

とはいえ、自治体でのICT活用は、民間に比べて進みづらい。自治体内部のITに関わる人材不足がその理由で、それをカバーするため、民間で経験を積んだ専門家を「CIO(情報統括責任者)補佐官」として置く自治体が増えてきた。

しかし、ここに落とし穴がある。民間企業に比べると、自治体の業務範囲は、福祉、衛生、観光、産業振興、都市計画、防災、教育など、あまりに広範にわたる。また、掛け合わせることができるテクノロジーとしても、IoT、ビッグデータ、人工知能(AI)、ドローン、SNSなどと幅広く、そのどれもが矢継ぎ早に進化を遂げている。

CIO補佐官といえども、すべてのテクノロジーの最新情報をフォローし続けるのは不可能だ。その結果として、いまでもICTの知識がない部署で、市民に使われないアプリを大量につくり出し、紙ベースの業務を置き直しただけの、使い勝手の良くない業務システムが構築されている。

そんな状況のなかで、いま注目されているのが民間のIT企業の社員が期間限定で自治体職員と一緒になって働く、コーポレートフェローシップだ。これを受け入れる自治体や社員を派遣するIT企業が、このところ増えている。

「Yahoo!」や「NEC」も参加

自治体へのテクノロジーの導入は世界的なトレンドであり、その震源地となったのは、やはりアメリカのシリコンバレーだ。2013年からサンフランシスコに本部を置くNPO「Code for America」が、全米の自治体へのIT人材の派遣をはじめた。

エンジニアなど3人一組で派遣され、これまでにサンフランシスコ市やシアトル市など全米67の自治体へと派遣された実績がある。送り込まれたチームは、自治体が抱える課題を調査し、テクノロジーを駆使した解決策を提案する。

例えば、サンフランシスコ市では、レストランの衛生上の安心・安全を高めるために、レストランの評価・口コミサイトである「Yelp」が連携した。具体的には、市の公衆衛生部門が把握したレストランの検査結果を「Yelp」で公表したのだ。これによって、レストラン側は衛生点数を気にするようになり、食の安全性が高まり、同時に「Yelp」の利用者数も増えている。


Code for America本部を訪問した神戸市の久元喜造市長。

日本でも、シリコンバレーの「Code for America」に触発されたメンバーによって「Code for Japan」が設立され、「コーポレートフェローシップ制度」(2018年度から「地域フィールドラボ制度」に改称)がスタートしている。
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文・写真=多名部重則

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