アルコールは1日1杯でもリスク? 「適量」に再定義の必要性

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アルコールの消費量はどの程度までが安全なのか──。その境界線についてはこれまで、情報が混乱してきた。だが、先ごろ発表された研究結果によると、「安全な」アルコール消費量の上限は、少なくとも米国ではこれまで考えられてきた以上に少ない量になるようだ。

ここ数年に公表されたその他の研究結果でも、「アルコールの消費量は少ないほど良い」「これまで適度とされてきた量は、実際には多すぎる」との結果が示されてきた。英医学誌ランセットに掲載された論文によると、今回新たに示された結果も、それらとほぼ同様の内容だ。

英ケンブリッジ大学を中心とする研究チームは、19か国で過去に実施された飲酒習慣に関する83件の研究結果を見直した。調査対象者は、全ての研究を合わせると約60万人。喫煙の習慣の有無や糖尿病、年齢なども考慮し、チームは調査対象者の7~8年間におけるアルコール消費と健康状態との関連性について分析した。

その結果、安全なアルコール消費量は全体として、純アルコール量で週当たり約100gであることが分かった(アルコール度5%の酒500mlに含まれる純アルコールの量が20g)。これを上回る量を消費していた人たちは、病気のリスクが高まっていた。例えば、週当たり100g以上を消費していた人たちは、脳卒中のリスクが14%上昇。高血圧性疾患(高血圧症)と心不全、大動脈瘤(血管破裂)のリスクがそれぞれ24%、9%、15%高まっていた。

また、40歳の人の平均余命は、週当たり10ドリンク以上を消費していた人で1~2年、同18ドリンク以上を消費していた人で5年短くなっていた(1ドリンクは、米国では純アルコール14g)。

「適度」のアルコール消費は(死因になる程度ではない)心筋梗塞のリスクを低減させているとの結果も示されたが、論文の著者らはこの明らかな利点について、「飲酒がもたらすリスク全体を相殺するほどのものではない」と結論づけた。

これらの結果が示すのは、これまでの研究結果で「控えめに見た場合の推奨量」とされてきたアルコールの量でも、実際には多すぎた可能性があるということだ。研究チームは、40歳の人が英国で推奨される週当たり112g以上を消費し続けた場合の平均余命は、1.6年短くなると推計している。また、米国で男性の推奨量とされる週当たり196gを超えて飲酒していた場合は2.7年短くなっていた。

各国で基準にばらつき

研究者らはまた、推奨されるアルコール消費量が各国で異なることを指摘している。米国では、女性は1日当たり1ドリンク、男性は2ドリンクとされている。一方、イタリアとポルトガル、スペインではこれらより約50%高い値に設定されている。英国では科学研究の結果をより強く反映し、男女とも週当たり112gとしている。これは、ビールなら5~6パイント(1パイントは約500cc)、ワインならグラス6~7杯に当たる。

研究者の中には、安心して「これなら安全」と薦めることができるアルコール量はないとする人たちもいる。一方、医師の一部は、少量であれば健康上の利益があるとして飲酒を勧めている。だが、後者は明らかに、健康に関する専門家たちに受け入れられる見解ではない。

新たに発表された研究結果は、アルコールの「適量」と「推奨量」について、政府当局に再考を促すものになるかもしれない。健康に関しては大半の分野において、「適度」が良いとされている。アルコールについては特に、まずは何が「適度」であるかの定義を明確にすることが重要だ。

編集=木内涼子

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