米国国務省がスーダン、シリアと並ぶテロ支援国家に指定するイランは、多くのテロ組織の主要なスポンサーとなっている。中東のテロ組織の経済力や軍事力のバランスはいま、イランに左右される度合いが非常に大きくなっているのだ。
この状態は、イランが近年の財政的な泥沼状態から救い出されたことで可能になった。
「核合意に調印し、制裁が解除されたことで、イランの首にかかったロープが解けたのです」
前出のアモス・ギラド少将はそう断言する。「米国はイランを経済的絞殺から救ったのですよ」
さらに、中東の他の国々、とくにペルシャ湾岸諸国も、中東でのテロ活動の財政的支柱の1つとなっている。彼らは自国の民間団体の財政的不法行為に目をつぶる形で間接的に関与したり、拉致された市民の身代金を支払ったりしてきた。
17年には、イラクを訪れたカタール王家の26人が、イランの支援を受けた地元のシーア派民兵に誘拐される事件が起こった。この時カタールは、人質解放のためにとてつもない額の身代金を支払うよう「強いられた」。フィナンシャル・タイムズ紙によれば、その額は10億ドル前後に上ったという。
この時、シリアとイラク(そしてイラン)のテロ組織に流れた空前の身代金は、カタールによる直接的なテロ支援と見なされ、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、エジプト、バーレーンなどがカタールと断交する事態を招いた。
またテロ組織は、テクノロジーを駆使して、資金を得たり移転したりする方法を常に探っている。ウォールストリート・ジャーナル紙の最近の報道によれば、「イーベイ」や「ペイパル」の偽アカウントを使って米国内の工作員に資金を送っていたISの国際的ネットワークが、FBIに摘発された。
また「グーグル」や「ユーチューブ」は少し前から、テロ組織がプロパガンダ用のビデオを投稿するお気に入りのプラットフォームになっている。彼らの動画は人気が高く、宣伝効果や新たな支持者だけでなく、多額の広告収入ももたらしている。
ISなどは、「ビットコイン」のような暗号通貨を利用した送金システムも構築している。取引には従来とは異なる世界的金融システムが使われ、ユーザーは完全な匿名性を保てるのが特徴だ。
情報と国家安全保障の世界的権威であるコースタル・カロライナ大学のジョセフ・フィッツアナキス博士によれば、現在のテロ組織は音楽や映画、オンラインゲームの海賊版、偽ブランドのアパレル製品、電子機器、時には偽薬や、コンサートやスポーツイベントの偽造チケットを売る例さえある。
「暗号通貨と“ダークネット”を利用することで、今日のテロ組織はクリエイティブな方法で資金を集めたり金を儲けたりすることが可能なのです」