出会いから銀行まで、シンガポールのデジタル快適生活

DBSが去年11月に大型商業施設内に開いた新しい店舗。デジタル世代向けで、24時間対応の無人窓口や業界初のVRを使った老後の相談コーナーなどがある。


政府の強いイニシアチブで進むデジタル化

日本と比較して、とくに便利で効率性が高いと感じるのは、公的機関によるサービスのデジタル化です。例えば税金の納付。シンガポールでは、外国人を含め年間2万シンガポールドル以上稼ぐ人に納税の義務がありますが、その手続きはすべてオンラインで完結します。

シンガポールでは、会社員の場合でも、各個人が自分の納税額を個別に確認し、納税する必要があります。一方、企業は従業員に払っている給与について、政府に申告をしています。会社員である場合には、毎年、前年に自分が給与として受け取った金額についての確認の連絡を政府から受け取り、それをオンラインで申請して完了です。

また、日本では決められた場所に書類を携えて申請しに行かなければいけないパスポートですが、シンガポールの場合、国民はオンラインで写真や証明書類をアップロードするだけで申請が完了します。最近では、永住権の申請についても、すべてオンラインで完結するようになりました。

公的機関に続いて便利だと感じるのは、銀行のサービス。日本では、銀行に口座を開設してキャッシュカードを受け取るのに1週間程度かかりますが、シンガポールの場合は、手続きをしてその場で即日発行される場合がほとんどです。

またオンラインバンキングが主流で、最近では銀行が提供するアプリケーションに事前に電話番号を登録すれば、登録している人同士であれば、銀行口座番号等の詳細がなくても、手数料もなく、簡単に送金できるサービスも浸透してきました。友人同士などでお金のやりとりが発生する場合には、現金ではなく、こうしたサービスを利用することが多々あります。


24時間対応の無人窓口。IDさえあれば、銀行の有人窓口手続きのほとんどの手続きがここでできる(左)。ショッピングモールの中の店舗内にはペッパー君も(左)。

こうした公的機関や銀行など、人々の生活に欠かせないインフラのデジタル効率化が進んでいる背景には、シンガポール政府がイニシアチブをとって、デジタルを使って国と国民の距離を近づけようと努力していることが挙げられます。

もともと国土が狭く、土地や資源、人口など、国としての資源が限られるなかで、いかにGDPを拡大するかという生産性への強い危機感があることが、こうした国を挙げてのデジタル化を推し進めている背景にあるようです。

その努力もあってか、早稲田大学電子政府・自治体研究所が中心になった世界11大学の代表者からなる調査チームによると、シンガポールは2017年の世界電子政府ランキングにおいても第1位という評価。またIMD世界デジタル競争力ランキングにおいても、ランキングを構成する3つの分野のうちの2つ、「知識」と「テクノロジー」の分野で第1位の評価を得ています。

テクノロジーやAI(人工知能)の発達、少子高齢化など、同じ先進国として置かれる状況やそれに伴って抱える課題に近い部分も多い日本とシンガポール。日本がシンガポールという国から、またそこに生きる人々から学べる部分はまだまだたくさんあります。

連載:シンガポール的ライフマネジメント術
過去記事はこちら>>

文=小川麻奈

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事