出会いから銀行まで、シンガポールのデジタル快適生活

DBSが去年11月に大型商業施設内に開いた新しい店舗。デジタル世代向けで、24時間対応の無人窓口や業界初のVRを使った老後の相談コーナーなどがある。

「この国は一度住んだらなかなか離れられない」

シンガポールで暮らす日本人からこのような言葉を聞くことは少なくありません。現在、約3万人の日本人が住んでいると言われるシンガポールですが、さまざまな面での快適さから、長期に居住することを選んだり、永住権を取得したりする日本人もたくさんいます(現在は永住権を取得する基準が厳しくなっていますが)。

シンガポールの国自体の面積は、東京23区とほぼ同じくらい。日本でもよく知られているマリーナベイ・サンズのあるマリーナ・ベイエリアに隣接するシティ・エリアには、金融や情報関連企業、グローバル企業の東南アジア本社またはアジア本社が多数あります。

その街の中心であるシティ・エリアから車を30分も走らせれば、島の北端にまでたどり着いてしまうぐらいコンパクトなシンガポール。地下鉄やバスが島を縦横無尽に走っており、少し郊外のエリアからシティへ・エリアへの通勤も不便はありません。

そんな物理的なコンパクトさと同様に、快適で効率的なシンガポール生活に大きく寄与しているものがあります。それは日々の生活に、デジタル化が浸透していることです。

シンガポール人は新しいテクノロジーに柔軟

最近、面白い調査結果について知る機会がありました。シンガポールのYouGovという調査機関による、シンガポール人のマッチング(出会い系)アプリに関する利用状況の調査結果です。2017年9月に実施された調査ですが、対象となったシンガポール人のうちの3人に1人がマッチングアプリを利用したことがある、と回答。ミレニアル世代においては、43%が利用したという結果が出ています。

これに対して日本ではどうでしょうか。MMD研究所とコロプラが、スマートフォン向けインターネットリサーチサービス「スマートアンサー」にて実施した共同調査によると、マッチングサービス・アプリ自体の認知度は38.2%、うち利用経験者は22.8%という結果でした。日本人では、「アプリで出逢いを探すだなんて」というような心理的な抵抗も強い気がします。

シンガポールのマッチングアプリの利用率が高い背景には、シンガポールに住む人たちのテクノロジーへの柔軟性や適用性の高さがあるかもしれません。私のごく身の回りでも、マッチングアプリを使ってパートナーに出会った人、そして結婚にまで至ったという話はさほど珍しくありません。

また、「出会い」に限らずとも、シンガポールで日々暮らしていくにあたって、テクノロジーを駆使したサービスは人々の生活と結びついています。

例えば、バスの運行状況ですが、シンガポールのバス停には時刻表がありません。その代わり、アプリが最寄りのバス停から、あとどのくらいで、どのバスがやってくるかということを教えてくれます。交通手段でいうと、シェアリングカーのサービスもこの国には欠かせないインフラ。車を所有することにとても高いコストがかかるシンガポールでは、このサービスが人々の生活を支えています。

またスーパーマーケットやレストランのデリバリーサービスも、共働きの世帯が多いシンガポールでは、生活に欠かせない便利なサービスとして浸透しており、テクノロジーが人々の手となり足となり、生活を便利にしてくれていることを実感できます。
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文=小川麻奈

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