この数週間でアリババ傘下の地図情報会社「AutoNavi」をはじめ、インターネットサービス大手「Meituan Dianping(美団-大衆点評)、以下『美団』」などが独自の配車プラットフォームを立ち上げた。これらの企業が今後、滴滴の牙城を崩す可能性は大いにあるとアナリストらは分析している。
AutoNaviの提供するデジタル地図サービス「Gaode」のアクティブユーザー数は4千万人に上り、同社はこれらのユーザーの中からドライバーをリクルートしている。AutoNaviの特徴は、ドライバーから手数料を徴収しないことだ。また、美団は評価額が300億ドル(3.2兆円)に達し、豊富な資金力が強みだ。同社はホテル予約やフードデリバリーなど幅広いサービスを展開しており、新たに立ち上げた配車サービス事業には少なくとも10億ドルを投資すると宣言している。
さらに、旅行サイト「Ctrip」も中国で配車サービスを展開するのに必要な免許を最近取得した。他にも自動車大手の「吉利汽車」が支援する「Caocao Zhuanche」や、政府と関係の深いリムジン予約サービス「Shouqi Limousine & Chauffeur」が合計1億ドル以上の資金調達を行い、事業拡大を図っている。
競合の参入が相次ぐ中、滴滴のユーザーの多くが他社サービスに切り替える可能性が指摘されている。北京に本拠を置く滴滴は、2017年の資金調達時に評価額が560億ドル(約6兆円)に達した。同社は中国市場で80%以上のシェアを握っており、コンサルタント会社ローランド・ベルガーは年内に評価額が600億ドルを超えると予測している。
ウーバーの撤退後、滴滴は値引きを止めるなど利益改善に努めてきた。しかし、アナリストによるとユーザーの多くは引き続き低価格を求めており、値引きやプロモーションを大々的に行っている新興サービスにスイッチするユーザーが増えると見られている。
ドライバーも滴滴から離脱
「中国の配車サービス市場は巨大で成長ポテンシャルも大きいが、価格競争が熾烈だ。消費者は価格志向性が強く、滴滴へのロイヤリティは決して高くない」と市場調査会社Canalysのアナリスト、Jia Moは指摘する。
北京在住でヘルスケアスタートアップを起業したEdward Zhang(36)はこれまで滴滴を使っていたが、最近になって「Dida Chuxing」という小規模な配車プラットフォームに切り替えたという。その理由は、Dida Chuxingでは利用の都度キャッシュバックを受け取ることができるからだ。
ドライバーの滴滴離れも進んでいる。北京で滴滴のドライバーをしていたある男性は、美団への移籍を検討している。滴滴はドライバーに対し、ラッシュアワー時などにインセンティブを付与していたが、最近になって一部を廃止した。この男性は、「運転時間が増えたのに収入は減少した」と嘆く。
「競合サービスの方が高い収入が見込める。滴滴がインセンティブを付与しないのであれば多くのドライバーが美団に移るだろう」と彼は話す。
上海に本拠を置く投資会社「Gobi Partners」のパートナー、Ken Xuは、滴滴にとって最大の競合は美団だと指摘する。美団が運営するのは、グルーポンとYelpを組み合わせたようなサービスだ。近隣のレストランを探したり、映画鑑賞チケットを購入することができ、アクティブユーザー数は3億2000万人に達する。