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田坂広志の「深き思索、静かな気づき」

GaudiLab / Shutterstock.com

毎月、この連載エッセイを本誌に寄稿しているが、読者から、しばしば、次のような質問を頂く。

「どこから、その新たな発想が生まれてくるのか」

「どうすれば、そうした深い思考ができるのか」

これらのエッセイに、そうした発想や思考があるかは、謙虚に読者の判断に委ねるべきであるが、もし、それがあるとすれば、その理由はただ一つ。

筆者は、自分の中に「賢明なもう一人の自分」がいることを深く信じているからであろう。そして、その「もう一人の自分」に叡智を貸してもらう技法を、ささやかながら身につけているからであろう。

こう述べると驚かれるかもしれないが、文章の創作とは、本来、そうしたものである。

例えば、かつて『白い人』という小説で芥川賞を受賞した、作家の遠藤周作氏が、こう述べている。

「ある心中物語を書こうと思ったら、書いている途中で、主人公が『死にたくない』と叫び出し、結局、この主人公を殺せなかった」

この主人公の叫びは、ある意味で、遠藤周作という作家の心の奥にいる「もう一人の遠藤周作」が囁いたのであろう。「この主人公を殺すな」と。

このように、「深く考える力」というものがあるならば、それは、長時間考えることでも、一生懸命に考えることでもない。それは、心の奥深くにいる「賢明なもう一人の自分」の声に耳を傾けることであろう。

その「賢明なもう一人の自分」は、誰の中にもいる。そして、いつも、静かに我々の思考や思索を見つめており、ときおり、素晴らしいアドバイスを与えてくれる。

実際、この「賢明なもう一人の自分」は、我々の想像を超えた素晴らしい二つの能力を持っている。

一つは、論理思考を超えた「鋭い直観力」。

我々の多くは、緻密に論理を積み上げていくことが「考える力」であると思っているが、実は、それは、「考える」という行為としては、ごく初歩的な段階にすぎない。

文=田坂広志

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