ビジネス

2018.04.27

商工中金のあるべき姿とは?

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今後は、事業性を評価した無担保・無保証融資を活性化すべきだし、さらに踏み込んで事業再生や事業承継、M&A、メザニン・ファイナンスなどのミドル・リスク業務に注力すべきである。不祥事の温床となった危機対応融資は必要最小限に縮小する。ガバナンスとコンプライアンス、マネジメントも根っこから見直す。
 
そして4年後に、民営化できるか否かを判断するのである。
 
この民営化が世間では大きくクローズアップされた。小泉内閣時代から民営化が打ち出されながら、危機ごとに民営化が先送りされてきたからだ。
 
完全民営化こそ問題解決の決定打なのに、検討会はなぜ4年後に「完全民営化の実行への移行を判断する」などと迂遠な物言いをするのか、中途半端だ、との主張がメディアに躍った。
 
だが、事柄はそれほど単純ではない。ハナから民営化が結論であれば、検討会など不要である。商工中金も一民間金融機関として市場原理で活動すればよい。ビジネスモデルがどうの、危機対応業務がどうの、ガバナンスがどうの、と外から言われる筋合いではない。民間同士の公正、公平な競争に生き残れるかどうか、だけだ。
 
検討会が提示したビジネスモデルは、現在、民間に期待されながらあまり実現できていない、いわば民業補完の分野でもある。それに、中小企業の政府系金融機関への期待は根強い。現時点では、中小企業政策を完全な民の論理、市場原理に委ねてよいかの見極めも困難である。

座長の私は、当初、自説を抑えて会議進行役に徹したが、白熱する議論が飛び交う中、知らず口角泡を飛ばしていた。委員全員が、強い方向感としての完全民営化を意識しつつも、政策と現実の妥当性を勘案しながら、狭く湾曲したフェアウェイを探った。

白紙に設計図を描くゼロベースの仕事ではない。現存する構築物を、様変わりにリノベーションするための設計図を大変更する作業だった。それゆえにこそ、「解体」ではなく、「解体的に」加筆修正した図面を提出したのである。


川村雄介◎1953年、神奈川県生まれ。大和証券入社、シンジケート部長などを経て長崎大学経済学部教授に。現職は大和総研副理事長。クールジャパン機構社外取締役、南開大学客員教授を兼務。政府審議会委員も多数兼任。『最新 証券市場』など著書多数。

文=川村雄介

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