また、本人確認プロセス完了以降は数分間の単純な作業のみ。24時間以内に90%以上の海外送金がオンライン上で完結する。
招待プログラムの実施でバイラルを起こす
サービス開始当初、周囲からは「うまくいくはずがない」という声も多かったそうだが、あまり時間が経たないうちに、TransferWiseは軌道に乗り始める。
「多くの人が自分たちと同じ悩みを抱えていたこともそうだが、招待プログラムを実施したことが大きかったと思います。招待プログラムは友人を招待することで、その友人の初回送金時に限り、手数料を割引にしたほか、友人を3人招待し、その3人の送金額が一定額を超えたときは招待者にボーナスを贈呈するというものです。これにより、口コミでどんどんユーザー数が増えていきました」(クリスト)
2018年現在、200万人がTransferWiseを利用しており、毎月2000億円が送金されている。その結果、毎月60億円の手数料削減にTransferWiseは貢献しているという。
新サービス「ボーダレスアカウント」も英国などで始動
招待プログラムなどでユーザーを増やしていくことで、手数料収入を得て、2017年5月には黒字化を達成した。その一方で、新規事業に意欲的に取り組んでいる。
「日本での提供はこれからですが、法人限定にしていたボーダレスアカウントを最近、イギリスとヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアで個人にも提供を始めました。このサービスを使うことで、現地通貨の銀行口座を保持することができます。例えば、アメリカに行かずともアメリカの現地銀行口座の番号を取得できるため、イギリスにいながらアメリカの人にモノを売り、請求書を発行する際に口座情報を記載すれば手数料がかかりません。またユーザーは自分の好きなタイミングで両替することも可能です」(クリスト)
ボーダレスアカウントには、デビットマスターカードが付属しているので、現地で決済を行うことも可能となっている。
創業から7年。今後、TransferWiseはボーダレスアカウントの普及に注力していくほか、TransferWiseのユーザー獲得も引き続き、強化していくという。
「2016年9月に日本でもサービスを開始したのですが、まだ私たちは資金移動業者として免許登録が済んでいるだけですので、1回につき100万円の送金しか行うことができない。最近、金融庁で金融規制の見直しなどが検討されているので、今後、上限が100万円のルールも変わっていったらいい。
日本は昨年比でユーザー数が300%増加しており、重要な市場であると認識しているので、規制の見直しに期待したいね(笑)」(クリスト)
自分たちのフラストレーションから始まった会社、事業。目指すのは、海外送金の際の“隠れたコスト”で困る人をひとりでも少なくすることだ。
「儲けることは考えていません。コストをカバーできるだけの利益があれば、ビジネスはサスティナブルに続けていける。この考えで、ずっとビジネスをやっていきたいと思っています」(クリスト)