新技術を発表したのは、バークレー人工知能研究所(BAIR)の研究者たち。リリース「Making computer animation more agile, acrobatic─and realistic」で報告した研究結果で、彼らは自ら開発した人間の動作を学習するディープラーニング・アニメーションアルゴリズムを、「ディープミミック(DeepMimic)」と名づけた。
資料によれば、これまで使用されてきたデジタルアニメーション技法においては、ウォーキング、ランニングのような異なる動作を個別にカスタマイズして制作するか、単一の汎用アルゴリズムを使うという手法が採用されてきた。しかし、それらの方法にはそれぞれ長所だけではなく短所が存在した。
まず個別にカスタマイズする手法は、リアルかつ自然な動作を再現できるものの制作に時間がかかり効率が悪いという課題があった。一方、汎用アルゴリズムを使用すると制作が比較的容易になるが、それぞれの動作のクオリティーが落ちるという難点があったという。
BAIRの研究者たちは、ディープミミックにそれらふたつの手法の長所を採用。それぞれ異なる複数の動作データを学習させることで、“未経験”だった動きをコンピュータがより自然に再現できるようになったとしている。
「研究者陣は、走る、投げる、跳ぶはもちろん、バック転、側転、キックアップなど、25種類以上の動作技術を盛り込んだモーションキャプチャーを参照・データとした。そのモーションキャプチャデータをコンピュータアルゴリズムに入力した後、ディープミミックと呼ばれるシステムに、1ヶ月間にわたり各動作の技術を学習させた。コンピュータは、各技術をよりリアルに模倣するために数百万回の試行を繰り返した。試行錯誤を学び、モーションキャプチャデータと比較しつつ、各動作をより人のそれに近づけていった……」(前出リリース)
現在、動画を生成する「ディープフェイク」や、絵画作品や新たなイメージを生み出す「GAN」などが、AI技術の新たなトレンドとして浮上している。人間の動作を模倣・生成してデジタル世界で再現するディープミミックも、いずれその列に加わるかもしれない。
なお、人間の動作を人工知能に学習・生成させ機械上で再現するというコンセプトは、産業用ロボットなどハードウェアの研究領域にも応用されていく可能性がある。機械は人間の動きをどこまで理解・再現することができるのか。その未来がとても楽しみだ。