大型ICOとして期待が高まっていたメッセージアプリ「テレグラム」のICOも、SECからの監査を懸念してキャンセルされたと報じられている。
サンフランシスコの投資企業「Scalar Capital」のLinda Xieは「現在、ICOを行おうとしているプロジェクトの大半は理にかなったものではない。必然性のあるプロジェクトもあるが、それらは少数派だ」と述べた。
「ICOによる資金調達はスタートアップに多大な機会をもたらすが、違法な行為が広がるなかで当局が監視の目を強めている」とXieは話す。
仮想通貨に関する著書「Cryptoassets」の共同執筆者として知られるChris Burniskeも、同様の意見だ。「2017年はICOによる大型資金調達が相次いだが、現状の規制状況から考えて、今はICOを行うべきではないと人々にアドバイスしている」とBurniskeは述べた。
SECはICOで発行されるトークンが、条件次第では有価証券にあたりSECへの登録が必要になるとの見解を示している。今後は多くのICOが証券取引法違反に問われる可能性もある。
仮想通貨メディア「Token Report」によると、今年3月にはトータルで12億ドル(約1290億円)がICOで調達されていた。しかし、今後のICO市場は縮小に向かうと見込まれる。
仮想通貨コンサルティング企業「Multicoin Capital」のKyle Samaniは、ICOを中止すべきだとは思っていないが、今後は法令を遵守しつつトークンセールスを行うことが重要だと述べている。一方で、規制の強化を必要以上に恐れる必要はないとSamaniは話す。
「我々は長い時間をかけて当局側や弁護士の意見を聞いてきた。その結果、規制が導入されるとしても、それがICO市場に壊滅的打撃をもたらすものにはならないと確信している」
SECはICOの規制に向けたガイダンスを、今年中には発表するとXieやSamaniらは考えている。
ICO特化型ファンドとして知られる「Pantera Capital」のJoey Krugは、ICOに対するアプローチを昨年から変えていないという。しかし、小規模なスタートアップが能力を上回る巨額な資金を調達することには反対だという。
「実際のところICOによる調達額は以前と比べると減少している。それは、ICOを行う企業がアマゾンのように数十万人規模の従業員を抱えているわけではないからだ。ICOは小規模で無駄のないスタートアップのための資金調達方法だ」
KrugはICOのスキームを用い、スタートアップが必要以上の冨を生み出す行為から距離を置こうとしている。「それは企業を当初の目標から逸脱させることにつながる」と彼は述べた。ICOによる巨額の資金調達は、企業らが出資者の思惑とは異なる用途に資金を用いることにもつながる。