まず、ビヨンド・ミートのチームは、複数の従来型パティを何度もMRIに通し、タンパク質と脂質の構造を詳細に分析。それから、植物由来の要素を科学的に配置し、MRIにより示された構造を真似ることで、パティの感覚的側面をほぼ完全に再現した。
その結果生まれたのが、グリルの上で本物の肉のように焼ける植物由来のパティだ。ビヨンド・ミートの製品は、本物のしっとりした感触や焦げ、かみごたえをとどめ、ハンバーガーの香りさえ放っている。しかもコレステロールはゼロだ。
ベジタリアンやビーガン(乳製品や卵も食べない完全菜食主義者)の食生活に転向する消費者が急増しているというのが一般的な認識だが、ゴールドマンによると米国での割合はまだ5%ほど。彼とチームは、その数字を押し上げることを目指している。
これまでの成果を見ると、その見込みはありそうだ。同社によると、ビヨンド・バーガーは発売以降1100万個以上を売り上げ、現在、米国内2万5000か所以上の食品販売店やレストランで販売されている。
またビヨンド・ミートは最近、今後の製品研究や開発を担う新たな施設をカリフォルニア州南部に建設した。同社によると、同施設の規模と技術は旧施設を大幅に上回り、さらなるイノベーションが期待できる。
同社の成功には、次の3つの鍵がある。
1. 既存製品の11倍を実現する
著名起業家のピーター・ティールは著書『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』の中で起業家に向け、既存のものより「10倍良い」技術を作るように助言している。映画『スパイナル・タップ』のファンである私からは、ティールの一歩先を行き、ビヨンド・ミートのように自社製品が「11までいく」ことを目指すよう助言したい。
2. 良い販売場所を確保する
売り上げに重要なのは、販売経路や顧客を賢く選定することだが、同じくらい重要なのは、実店舗での商品陳列場所だ。ビヨンド・ミートのチームは小売企業を説得し、従来の食肉売り場に商品を並べてもらうことで、代替品としてのブランド認知を浸透させた。店舗内での配置は戦略的に。これはネット販売でも同様だ。
3. 社内で取り扱うプロセスを持つ
ビヨンド・ミートのように、製品開発・生産をできる限り社内で行う先進的な新ブランドは増えている(時には、自社の製造施設を購入するケースさえある)。製品の独自性と信頼性がますます重要になる中で、製造プロセスを管理する方法としてこれ以上良いものはない。
物理的な製品だけでなく消費者行動も超越する同社にとって、「ビヨンド(~を超えて)」はぴったりな社名だ。どのような分野でも、既存のものを超える道を描けば成功できるだろう。