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旅から読み解く「グローバルビジネスの矛盾と闘争」


デスティネーション・イベントー文脈ありきの事業モデル

「場合による(It depends)」

筆者がかつて通っていた米ビジネススクールでのケース・スタディの議論で、頻出していたフレーズだ。ビジネス戦略のあり方や、経営判断にひとつの正解はないということだが、結局は「文脈がすべて(Context is everything)」だからという風にも言える。

「1-54」のマラケシュ・エディションは成功したのだろうか。ビジネス的な成功に関しては、結論は出しづらい。「フィナンシャル・タイムズ」 は、アート収集家は欧米に集中しているのが現実であり、モロッコの通貨ディルハムでのビジネスのしづらさもあると指摘する。

一方で、アフリカ人とアフリカ系移民の現代アートに特化したグローバルなアートフェアとして、初のアフリカ大陸開催を実現させた「1-54」は、歴史的に意義深い功績をつくったことに疑いはない。

筆者自身、2010年のW杯南アフリカ大会や、2016年にケニアで開催されたTICAD会議(「アフリカ開発会議」)など、他にもアフリカ大陸初開催のイベントのために現地を訪問する機会があった。これまでの歴史で、「舞台」になる機会が少なかったアフリカほど、その現地の文脈の重要性が高い地域はないかもしれない。

アフリカ人にとって、自らのホームで、自らオーナーシップをもって、自身のカルチャーを世界に発信していく機会は、まさに脱植民地主義の過程において、今後より増えていく必要がある。


会期中100人近くの参加者が、ヴァン・ホーヴのアトリエを訪問した。

言い換えれば、現代アフリカン・アートのフェアが長続きするためには、アフリカ大陸としての文脈は欠かせない。アート作品の本質に近づこうと思えば、アーティストを知り、アーティスト自身や作品が生まれた文脈を知りたいと思うのは、自然な流れだ。アートフェア開催をきっかけに欧米の個人収集家がもっとアフリカ大陸に近づくこともできる。同時に、それはアフリカ人自身の収集家が増えていくことにも繋がる。

マラケシュ郊外に位置するヴァン・ホーヴのアトリエには、「1-54」の週末だけで100近くのアートフェア参加者が訪問したと聞いた。ヴァン・ホーヴや、「1-54」創設者のエル・グラウィといったアフリカ大陸出身のビジョナリーたちがつくる、デスティネーション・イベントという新たなビジネスモデルが、対話を生み、アフリカと世界を文化的にも経済的にも豊かにしていくのではないだろうか。

旅から読み解く「グローバルビジネスの矛盾と闘争」
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文=MAKI NAKATA 写真=1-54 / Art Africa Ltd

イーロン・マスクニューヨーク・タイムズeightデルフィナンシャル・タイムズタイムズウブロ
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