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旅から読み解く「グローバルビジネスの矛盾と闘争」


敷居の低さが「ブティック型」フェアの魅力

会期前日の金曜日に開催された招待客向けのプレヴューとオープンニング・パーティも、アート・ナイト同様に人でひしめき合っていたが、パーティの活気は実際の取引にもそのまま反映されていたようだ。金曜日の時点で、展示されている多くの作品に「成約済み」の印がついていた。

「ニューヨーク・タイムズ」の記事によれば、いくつかの主要な取引が金曜日時点で行われていたようだ。たとえば、パリのギャラリー「マニン-A(Magnin-A)」もその時点で10作品を販売したという。価格帯は、2500から22000ユーロ(33〜290万円)。同ギャラリーは、ロンドンやニューヨークのフェアにも出展する常連だ。


マダガスカル出身の作家ジョエル・アンドリアノメアリソア(Joël Andrianomearisoa)のによるテキスタルアート「情熱のラビリンス(Labyrinthe des Passions)」。価格帯は作品サイズに応じて、4000から25000ユーロ(53〜330万円)。

イタリアのギャラリーも活発に取引していたようだ。ミラノ拠点の「プリモ・マレラ・ギャラリー(Primo Marella Gallery)」によると、マリ出身のアブドゥライェ・コナーテ(Abdoulaye Konaté’)が「1-54」のために制作したテキスタイルは、フランス、モロッコ、ポルトガルの収集家の手に渡ったという。価格は、それぞれ2万5000ユーロ(約330万円)だ。

昨年開催のヴェネチア・ビエンナーレの参加アーティストでもあるコナーテに関しては、今回の「1-54」の会場入り口すぐの壁に、数メートルの幅がある大きな作品が展示されていた。

今回の「1-54」の参加者は、常連とも言えるフランス人参加者だけでなく、イタリア人の参加も目立った。例えば収集家を自認する40代ぐらいのイタリア人女性は、女友達と友人カップルの4人で、アート・フェアを主目的としてマラケシュに来ていた。

彼女は、インスタグラムでの発信や作品のチェックも欠かさない。今回は、先述のマダガスカル人作家、アンドリアノメアリソアの立体的な作品を購入したという。数100万円の作品を気軽に購入するには、当然ある程度の経済的余裕が必要だが、彼女たちは決して飛び抜けた富裕層というわけではない。投機目的ではなく、自分の愛する芸術に投資し、それをごく普通の日常として自宅に飾って楽しむ人たちだ。

「1-54」ならではの敷居の低さも、このオルタナティブな「ブティック型」アートフェアが、市場(マーケットプレイス)として成立し、成功している要素のひとつかもしれない。

アートから始まる、モノづくりビジネスとは

アートフェアや展示会は、マーケットプレイスとしての役割だけでなく、新しい視点や時代の潮流を提示する場としての役割も担う。「1-54」でその役割に大きく貢献しているのが、フェアと同時に開催される討議の場、「フォーラム」である。ロンドンやニューヨークでも、毎年ひとつのテーマに基づいて、パネルディスカッションが行われる。

マラケシュでのフォーラムのテーマは、「たゆまなき脱植民地主義!(Always Decolonize!)」であった。責任者はモロッコ人の執筆家、翻訳家およびマラケシュのアーティスト、学者、翻訳者のための文化施設「ダル・アルマムン(Dar al-Ma’mûn)」の共同ディレクターでもあるオマール・ベラダ(Omar Berrada)だ。



「時代はポストコロニアルだが、世界は未だ植民地主義から脱していない。宗主国は去ったが、過去の存在が長い影を落とし、精神的、美的、認識論的な空間を、頑なに占有し続けている」

フォーラムのテーマに寄せられたベラダのコメントは、一見、過去に囚われた重苦しいもののようにも思えるが、議論の方向性はあくまで未来志向だ。

文=MAKI NAKATA 写真=1-54 / Art Africa Ltd

イーロン・マスクニューヨーク・タイムズeightデルフィナンシャル・タイムズタイムズウブロ
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