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その後チームは、この考え方を実世界の例に当てはめ、科学研究に対する資金分配方法を、(1)全科学者への資金の均等な分配(2)科学者の小集団への無作為な資金の分配(3)過去に成功を収めた科学者への優先的な資金提供の3通りに分けて分析した。

これらの分配方法をテストしたところ、将来最も大きな成果を得られる最善の資金分配法は、全研究者の間で均等に分配することだと分かった。一方、最悪の方法は、過去の成功の有無を基準に資金提供を決めることで、過去の成功は幸運に大きく依存していたことを明らかに示していた。

この発見は、数年前に英科学誌ネイチャーで発表された別の研究結果でも確認されている。同研究はバスケットボールに焦点を当てたもので、直前に3ポイントシュートを成功させた選手は、もう一度同じようにスリーポイントシュートを決めようとすることが分かった。選手は、自分がシュート成功の波に乗っていると信じ込む落とし穴にはまってしまっていた。

だが同研究では、シュートの成功は予測不可能な力によって決まり、繰り返される可能性の低い細かな状況的要素に依存していることが示された。シュートを打つ場所やディフェンスからの圧力、試合の残り時間など、あらゆる要素が結果に大きな影響を与えていた。

ビジネス界は、グル(教祖)崇拝のとりこになることが多い。著名な思想家が、ある分野で成功する秘訣(ひけつ)を見つけたと主張するような状況だ。こうしたグルたちは、その成功をどのように再現するかを説いて回ることで、キャリアを形成する。

だがカターニア大学の研究は、成功には自身の力もある程度影響するものの、運の果たす役割が非常に大きいことを示している。成功とは、個人の才能だけではない多くの要素によって決まるものなのだ。

自分や他者の過去の経験から学ぶことは大事だが、忘れてはいけないのは、現在の状況について、過去とは違うまったく新しい状況としてとらえることだ。今の状況で成功するには、過去の成功でも恐らくそうだったように、新しい考え方が必要だ。成功をもたらす「ホットハンド」は近道をしても獲得できないのだ。

編集=遠藤宗生

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