ビジネス

2018.04.13

日本人が知らない中国Eコマース新勢力「拼多多」の戦略

XiXinXing / Shutterstock.com

中国のEC大手「アリババ」は、これまで中国の3700億ドル(約40兆円)規模と言われるEC市場で独占的なシェアを握ってきた。しかし、内モンゴル地区のフフホト市に住む59歳のLiu Lipingにとって、アリババのモールは高額商品が多く手が出せないという。

Liuは仕事を定年退職し、現在の月収は470ドルに過ぎない。彼女は2015年に初めてオンラインで買い物をした際、アリババのライバルの「拼多多(ピンドォドォ)」を利用した。拼多多ではトイレットペーパーのパックが1ドルやベッドのシーツが5ドルなど、生活必需品を安く買うことができる。

「拼多多は便利で値段も安い。わざわざ外に出て生活用品を買いに行くことがなくなった」とLiuは話す。

アリババとテンセントが大都市に住む富裕層の囲い込みで熾烈な競争を繰り広げる中、上海に本拠を置く拼多多は地方都市に住む低所得者層をターゲットにし、シェア拡大に成功した。同社は、わずか2年で1億人のユーザーを獲得し、中国で最大級のECサイトに成長した。アリババは拼多多の急成長に脅威を感じ、地方の市町村にようやく目を向け始めた。

拼多多は、2015年に元グーグルのエンジニアであるHuang Zhengによって設立された。同社が他のモールと異なるのは、オンラインショッピングとソーシャルメディアを融合させたことにある。ユーザーは、米国のグルーポンのように商品のまとめ買いができるだけでなく、テンセントの「WeChat」を使って共同購入する仲間を見つければ、最大90%の割引きが受けられる。

対象商品は、1ドルのTシャツから80ドルのスマホまで多岐に渡る。拼多多はソーシャルメディア上でのシェア数を増やすために、ロイヤル顧客にはさらにキャッシュバックや無料商品を提供している。

「工場直送」で低価格を実現

大都市ではインターネットの普及率が飽和状態にあるが、地方はまだ伸びしろが大きい。地方在住者の多くはWeChatを使って情報を入手しており、Liuも生鮮食品を安く購入した友人の投稿を見て拼多多の存在を知ったという。

アリババは、自社の「Tmall」にバーバリーやヴィクトリアズ・シークレットといった有力ブランドを誘致して富裕層の囲い込みを強化しており、小規模な販売業者や製造業者の多くはアリババから拼多多に移っている。拼多多のマーチャントであるトイレットペーパーメーカーの「Zhihu(通称Botare)」の場合、ユーザーからまとめ買いの注文を受けた後、江蘇省にある工場からユーザーへ商品を直送している。この方式であれば卸業者を何社も介す必要がなく、価格を安くすることができる。

拼多多の成長は目覚ましい。1月時点でのアクティブ・ユーザー数は1億1400万人と、ニューヨーク証券取引所に上場する中国のディスカウント小売り「Vipshop」を抜き、「JD.com」の1億4500万人に迫る勢いだ。コンサルタント会社「Analysys International」によると、ユーザーの約60%は中国の3級都市以下の地方部に住み、最近ECを使い始めたばかりだという。拼多多の昨年の月商はピークで16億ドルだったが、複数の現地メディアによると、今年に入って4倍に拡大しているという。
次ページ > 収益化には苦戦

編集=上田裕資

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事