上海で「モバイル決済」ライフをしたら、日本の遅れを痛感した

今年2月18日上海にオープンしたスタバの新形態「STARBUCKS RESERVE ROASTERY SHANGHAI」は世界最大。今後、東京にもオープン予定。店内は混雑しており、支払いはスマホが定番

いま、上海では買い物もレストランやタクシーの支払いも、モバイル決済が当たり前だ。では、いったい中国のフィンテックは、どのくらい進んでいるのだろうか。

それを実感するには、日本でふだん使っている自分のスマートフォン(以下、スマホ)に、中国のアプリをインストールして、モバイル決済や付随したサービスを現地で体験してみるのがいちばんだ。

実を言うと、すでに1年くらい前から、日本のスマホでも「ウィチャットペイ(微信支付)」というモバイル決済アプリのアカウントを取得すれば、現地の人たちと同じように利用できる。「ウィチャットペイ」は、10億人を超えるユーザー数を誇る中国のSNSである「WeChat(微信)」が提供するサービス。ちなみにアリババグループの「アリペイ(支付宝)」は現状では日本のスマホでは使えない。

中国に住む駐在員や留学生の場合、中国の携帯電話を日常的に使っているので、現地の人たちと同じようにこのサービスを使っているが、海外から中国を訪れる外国人はそういうわけにはいかない。

SIMフリースマホがあればいいという単純な話でもなく、各種アプリのアカウントの取得やサービスの登録、WiFiルーターの携帯ほか相当手間がかかる。

技術的な話は、中国へ頻繁に出張している人などがウェブで公開しているノウハウを参照していただくこととして、2月下旬に訪れた上海での自分自身の実地検証を報告したい。

料理の注文までスマホでできる

中国への渡航初日の夜、親しい上海人と会食した。中国でモバイル決済するために必要な人民元の電子マネーを日本円と交換してチャージしてもらうためだ。いわば公然のヤミ両替である。

「ウィチャットペイ」には個人間の送金機能があるから簡単だ。上海人の彼は「ぼくはもうこの2年くらい財布を持って外出したことはない」と言う。これは最近の中国の人がよく口にする自慢話で、自国の進んだサービスを日本人に手ほどきできるのがこのうえなくご満悦のようだ。

その後、彼の話が、単なる自慢話ではないことがわかってきた。中国のフィンテックはキャッシュレス化の普及による日常生活の利便性の向上にとどまらず、サービスのきめ細かさや奥深さにあふれ、それ自体が中国社会の抱えるさまざまな課題を克服するためのよく設えられた社会装置であることに気づかされたのである。

彼と別れた後、ホテルのそばの「ファミリーマート」でスマホを手にして中国で初めての買い物をした。商品をレジに渡し、「ウィチャットペイ」の自分のQRコードを店員にスキャンしてもらうことで決済は完了する。購入履歴は「ウィチャット」に「サービス通知」として残るので、領収証いらず。返品時の返金もバーコードをスキャンすることで一発OK。これは便利だ。

これに味をしめ、翌日からはモバイル決済しまくりである。朝は、地下鉄の入口の屋台で上海の通勤客にならって朝食をテイクアウトし、書店で本を買い、タクシーに乗って、昼はレストランで飲茶をした。


タクシーの支払いも運転手のスマホのQRコードをスキャンするだけ
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文=中村正人

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