ゲノム解析の女性起業家が考える、私たちの未来


覚悟が葛藤を凌駕する

さて、次の問いは、覚悟とは何なのか? ということです。

時間軸を客観視できるようになったのは人類史上の最も大きな収穫の一つだなとよく思いますが、覚悟とは、まさに時間軸が大きく関係するものだと考えました。

覚悟とは、不確実で曖昧な未来に対して、どうなっても絶対に後悔しないということを最初に決め抜いておく碇のようなものだと思いました。



覚悟を持っておくと、葛藤が少なくなります。なぜなら時間軸の中で先にそう決めているからです。覚悟は、いつも後から付け足すことはできず、後からは改竄(かいざん)できません。まるでブロックチェーンのようだ、と思います。

葛藤しないと言う経営者や研究者は、これを達成するまでは絶対に迷わないし後悔しない、ということを考え抜いた上で先に決めて覚悟を持っている人がほとんどでした。

たとえばオリンピック選手が、インタビューで「自分にできることはやり切ったので何も悔いはないです」と清々しく言い切れるのは同じような現象です。不確定な未来に対して、これをやり切れば後悔しないと先に心に決めています。

覚悟というと大袈裟ですが、自分にできることをやり切ってってみよう、それで何が起きても後悔しない。というのがそれです。どちらにせよほとんどの未来は不確定なのだから、正解を選択できているか葛藤するよりも、自分で選択した道を正解にすると決め切る方がよいという考え方です。

たとえば、美味しいものをたくさん食べたいけど、太ったり健康を害したくはないという、日常の葛藤があるとします。この場合、どれだけ太っても後悔しないから美味しいものを我慢するのは絶対譲れない、と覚悟をしている場合は、葛藤なんてしません。私の場合は、自分にとっての適正体重の範囲と継続的に達成できる平均摂取カロリーの上限値を決めていて、その範囲の中であれば後悔しないことを決めているため葛藤は起こりません。

同じように先に決めた決意に則って行動すれば、悶々と懊悩することは少なくなります。なぜなら自分が先にそう決めたからです。以前、けんすうさんがブログで、新しいことをはじめる時のコツは先にルールを決めておく、ということを書かれていて、似たような概念だなと思いました。

新たなプロダクトを作る際に「このような設計でいいのだろうか?」と悩むときも、「この研究をしていて何かの役に立つのだろうか?」と思うときも、若い人の才能を目の当たりにして「自分の立ち位置はこれでよいのだろうか?」と疑懼(ぎく)するときも、考え抜いた結果覚悟を決めれば、凛として対峙することができます。

今日一日の過ごし方から人生の大きな選択まで、事業も研究も職業選択も結婚も生き方も、同じことが当てはまります。悶々と悩むよりは、これは絶対やり切るし、それでダメでも後悔しないと先に決め切ると、自分に胸を張って清々しく挑戦ができます。

それにしても覚悟は、なかなか無意識にはできることではないな、とよく思います。たとえば、よほど重要な日ではない限り、大きな覚悟を持って今日を絶対後悔しない一日にしようと臨むという人は多くはありません。

覚悟を決めるのを習慣化するがうまいなと思う人がたまにいますが、自ら意識した方が覚悟は決めやすいです。

文=高橋祥子

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