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2018.04.11

【編集部厳選】いま注目すべき、日本の「小さな大企業」11選

世界基準の感染症対策シールドを販売するエネフォレスト



平安伸銅工業のクリエイティブユニットTENTとの共同ブランドDRAW A LINE。

<セカンドローンチ賞>


突っ張り棒から始めるインテリア
平安伸銅工業/設立:1952年/代表:竹内香予子

機能重視の家具メーカーから、ライフスタイル提案企業へ。縦横問わず設置でき、カバン掛けやライトスタンド、小物置きなど暮らしに合わせた使い方を選べるスタイリッシュな突っ張り棒「DRAW A LINE」が、2017年度グッドデザイン賞を受賞。

元々ベランダ物干しなどの収納用品を手がける会社だが、父の急病を機に32歳で代表を継いだ竹内が、低付加価値・価格競争の経営では売り上げは縮小する一方だと考え、経営方針を転換。省スペース目的の突っ張り棒をインテリアに使うというアイデアを思いつく。海外展開も開始しており、竹内は15年女性起業家応援プロジェクト「LED関西」ファイナリストに選出された。

ものづくり企業が手がける3Dプリンター
久宝金属製作所/設立:1947年/代表:古川多夢

「ないものづくりエージェント」を自称するものづくり企業が、製造機械を手がける。32万4000円で販売する3Dプリンター「Qholia(クホリア)」が、フィギュア造形師や建築家などの個人制作者に最大で半年待ちの人気。製品開発に用いた市販のプリンターに不満を持った古川が個人開発し、取引先の勧めで一般販売。安価なFDM(溶融樹脂積層型)方式ながら、微細かつ高精度な造形が可能。

<グローバル賞>

トップ1%にこだわるLEDサイン

ダイカン/設立:1964年/代表:仁義修

渋谷ヒカリエに入居する高級商業施設や、PUMAや東京ミッドタウンなど、トップ1%の高級市場のみをターゲットにLEDサインを製造。視認されやすい「目線位置のサイン」に集中して急成長を遂げた。国内市場の限界を見据え、1996年に英語版HP作成、2008年にベトナム事務所設立など、いち早く海外展開を開始。東京五輪までに中国企業と戦えるコスト力を培い、一気に世界進出する予定だ。

「世界一美味しい鍋」の下町ロケット物語
愛知ドビー/設立:1936年/代表:土方邦裕


高い密閉性で素材の旨みや水分を逃さない構造で、調味料や水をほとんど使わない「無水調理」に適した鋳物ホーロー鍋「バーミキュラ」を開発。クレーン車の油圧部品など産業機械の製造を長らく続けてきたが、倒産寸前に。下請け脱却を考えた土方が「鋳造技術」と「精密加工技術」を併せ持つ企業が少ないことに目をつけ、兄弟で調理品製造に挑戦。

2010年の発売以降、SNSの口コミで知名度を上げた。現在は世界中から販売依頼が殺到し、既に中韓などで代理販売を開始。ライフスタイルの聖地・サンフランシスコに拠点を設立した。技術力と当地でも好評な日本の町工場のサクセスストーリーを武器に、進出準備中だ。

<ベストエンゲージメント賞>

「IT×腕×制度」でつくる現代の職人企業
武州工業/設立:1951年/代表:林 英夫

自動車熱交換器の配管や宇宙航空機、医療用品などの部品を製造する「パイプ加工」で、50年間黒字経営の自立型技術者集団。各製造工程に従業員を割り当て大量生産する「ロット生産」に対して、一人の技術者が製造から確認まで一括管理する「一個流し生産」で高品質を実現する。

一見すると属人的だが、武州工業ではIT・IoTで工程管理を補助。加えて個人の手が届く場所に機械を配置して無駄な品質確認や移動を省略し、作業の効率化を高める。

職人が存分に実力を発揮できるよう制度づくりを徹底。研修プログラムでは最難関技術であるアルミのロウ付けを最初にマスターさせ、どんな技術も努力次第で習得可能だと実感させる。

また、社員の思考スタイル別にゴリラやボノボなど類人猿のバッジを身につける「類人猿分類」でコミュニケーションを円滑化。「どんな地域にも、安定した仕事が必要」と林。効率化の徹底は、LCC(ロー・コスト・カントリー)を実現してインドなどの人件費最安国と戦える職人企業をつくり、地元に仕事を残すためだ。社員定着率は90%を超えている。


武州工業開発の機械で行う極小曲げ加工で、直径16mmの小さなパイプを直角に曲げることも可能に。

一流の研究機関を顧客かつアドバイザーに
エリオニクス/設立:1975年/代表:岡林徹行

日本電子から独立した技術者たちによる技術開発型ベンチャー。粒子線を応用した世界最高精度のナノテク装置を開発しており、世界一細い4nm(100万分の4mm)の線を描ける「超高精度電子ビーム描画装置」などを手がける。これは最先端のトランジスタ(半導体素子)開発に用いられており、次世代の半導体開発を牽引。例えば小売店の全商品を管理する小型ICタグの実現など、IoT時代の基幹技術として期待されている。

ハーバード大や東大、ソニーなど世界最高レベルの研究開発機関を顧客に持つ。これを可能にする高い技術力の源泉は、世界的な研究者の高度な要求に応えながらも時には積極的に提言する「対等な関係」の構築にある。

大学の研究室から同社のインターンに参加した優秀な学生が多数入社。東大の研究論文で製品名が記載されることで知名度が向上するなど、人や評判の好循環も生み出している。入社2~3年の若手には積極的に製品開発を担当させ、成功体験を積ませる。2014年、経済産業省「グローバルニッチトップ企業100選」に選出。

文=野口直樹 イラストレーション=(フォリオアート)ムティ

この記事は 「Forbes JAPAN ニッポンが誇る小さな大企業」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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