ビジネス

2018.04.12

スポンサー36社! 個人の課外活動「空飛ぶクルマ」が組織を動かす

(c)CARTIVATOR




ミッション共感を軸に個人を組織化

現在、CARTIVATORは100名のメンバーで構成され、彼らは組織化された10個のチームのいずれかに属する。採用面接を引き受けるのはHRチーム。目標実現のためにマッチングの精度を高めようと、誰でも受け入れていた体制から、適切なタイミングで適切な人材を採れるよう変更。各チームに必要な人員をヒアリングし、ウェブサイト等で募集をかけている。

スポンサーも増えたことで経理チームも立て、資金の管理や部品購入等の管轄をしている。交通費等、活動の諸経費は自己負担を徹底しているが、「資金がないとリソースも増やせません。このような体制になったのは昨年10月くらいから」と中村氏は言う。

毎週土曜日、全3拠点(愛知1:技術、東京2:技術、事業)をつなげて全体ミーティングを行ったのち、チーム毎に分かれて活動している。コミュニケーションはチャットツールやスカイプを介して行う。

拠点も離れていて、本業が他にあり、時間も人によってまちまち。ましてやコミュニティ。先細りしそうなイメージがつきまとうが、「基本的に活動のミッションに共感した同じモチベーションのメンバーでやっていますので、クリティカルな問題まではいきません」

そう言い切れるのは、チーム単位で情報を共有し、1ヶ月に一度は全員で進捗状況を発表することで、意識や知識の共有を常に図っているためだ。

「どうしても無理を言えないことはあります。この日までにやりきると決めたとしても、本業があるなか完遂しきるための強制力を働かせることは難しいです。そこでマイルストーンを設定し、誰かがやるというより、皆でここを目指しているという認識のもと、力を合わせてやっていっています」

外圧を活用した社内の巻き込み
 

CARTIVATOR 代表・中村翼氏

側から見たらオープンイノベーションの形態をとっているように見えるが、中村氏自身はそうした感覚はないという。SkyDriveに関してスポンサーからの干渉も少なく、大それた成果を求められているわけでもない。応援するから何かあれば言って欲しいという好意的な姿勢ばかり。有志だけでは難しい部分もあるため、一部の企業からは技術的な協力をいただいたりもしているという。

スポンサーには「テストベットなものと思ってください。先端技術を試してみたい等あればぜひ一緒にやりましょう」と話しているという。企業内で試すにも言い訳がつかないようなものが多々ある。「五輪自体が利益を追求したイベントではありません。本プロジェクトは様々な企業と実現していこうという想いが強いです」

CARTIVATORには、中村氏以外にも国内の大手自動車メーカーや航空業界に籍を置くメンバーが多数存在している。彼の言葉を借りると「オールジャパン」。そのためにも特定の色に染まるようなことはできるだけ避けておきたいと話す。

もしオープンイノベーションをうまく進める方法があるとするなら、「外部の力を取り入れること。ビジネスコンテストで優勝したり、外部のメディアに取り上げられりしたことで社内が動くこともありました」。外圧が時代を変えるきっかけになることは歴史が証明しているが、中村氏もそれをうまく活用し、社内の関係各所の巻き込みを図っていった。

日本における「改革のDNA」とは

個人起点の課外活動を出島とし、ミッションへの共感をもとに既存の体制を離れて仲間を募る。時に外圧を活用しながら社内を変革し、イノベーションを成功へと導いていく。日本企業にイノベーションは起こせないと揶揄され久しいが、何かをドラスティックに変える「改革のDNA」があるとするならば、ヒントは歴史にあるのかもしれない。

連載 : 世界を目指す「社内発イノベーション」事例
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文=木村忠昭

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