ビジネス

2018.04.10

「毎日違うルートで出勤」が発想力の源泉に

photographs by yOU(YukoKawasaki)

不動産をライフスタイルとして提供するCity Lights Tokyo。魅力的な物件のみならず、周囲の店やゆかりの人について自社メディアで紹介する荒井昌岳社長の日常とは?


大学卒業後に総合不動産会社でマンションの販売を担当し、その後数社を経て、2011年に独立。現在は、東京ならではのデザインオフィス物件を紹介する「TOKYO WORKSPACE」、週末別荘やシェア別荘など新しい別荘の価値観を提供する「休日不動産」、表参道・原宿エリアのリアル情報メディア「OMOHARAREAL」を主とした事業を展開しています。
 
街は人がいないと成立しません。不動産も建物を建てるだけではハコをつくったに過ぎず、店舗なり住居なり、そこに人が入ってくれてようやく不動産として機能する。僕が事業の根幹に据えているのは、街を形づくる「人」のライフスタイル構築に刺激を与えること。

普通の不動産賃貸サイトの情報では街そのものの魅力は見えてこないので、「(家以上に)その街そのものに住みたい」と見た人が感じてくれるような、ストーリーのあるコンテンツと物件を丁寧に積み上げるようにしています。
 
そのようなメディアを日々更新するためには、自分自身が街の変化や状況をしっかりと感知していないといけません。例えば、自宅は表参道なのですが、自転車だと5分の距離を、毎日違うルートで出勤します。天気のいい日は近くのコーヒースタンドに寄り道したり、路地裏で新しい店を発見したら撮影させてもらったり。

あとは、最初に訪れた土地に対する感動ってありますよね。田んぼが並んでいるだけなのに美しく感じるとか、地物の野菜や魚がとても美味しいとか。でも、住民にとってそれらは「日常」であって、「魅力」とは気づけなかったりする。だから毎朝リセットし、初めて来たかのような視点で街を観察することを心がけています。
 
いまのオフィスには約1年前に引っ越してきました。自宅は映画を観るのと寝るだけの空間で、オフィスが自分のリビングでもあるので、予定がなければ気のすむまでいます。休日もオフィスで過ごすことが多く、読書したり、映画を観たり、昼寝したり、のんびりと。平日とは違う時間が流れているので、考え事にも最適です。居心地がいいのか、特に用もないのにふらりと訪れる知人も多いんですよ(笑)。
 
僕は自分でも驚くぐらい単語や名前などを覚えることが不得手です。でも、不思議なことにビジュアルやストーリーだと忘れない。表層の情報だけだと難しくて、根っこの部分を理解すると全体像がわかるタイプというか。だから映画や小説が好きなんでしょう。もしかしたら、人の感情に触れることで疑似体験を積み重ねて、何かあったときにイメージできるパターンを増やしている部分もあるかもしれません。
 
語弊があるかもしれませんが、サイトづくりは子育てみたいな楽しさがあります。サイトは物件紹介だけでなく、お店紹介や、表参道・原宿にゆかりのある人のインタビューも掲載しているのですが、コンテンツ数を増やすことだけを目標にすると、一つひとつのクオリティが下がる。

僕もスタッフもこの子(サイト)をどう育てていくかにいちばん注力していて、そのクオリティキープのために自ら街を歩き、人と会い、感動する心を忘れないように心がけています。
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著者=堀 香織 写真=yOU(河崎夕子)

この記事は 「Forbes JAPAN ニッポンが誇る小さな大企業」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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