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2018.04.10 11:30

台湾エイサーが注力「娯楽施設向けVR」の巨大なポテンシャル

SunnyToys / Shutterstock.com

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台湾のPCメーカー大手「Acer(エイサー)」はパソコンの売上が落ち込むなかで、VR(仮想現実)関連デバイスに活路を見出そうとしている。

Acerは今年3月、世界最大規模のVR娯楽施設であるドバイのショッピングモール「The Dubai Mal」に、同社のVRヘッドセット「StarVR」を納入するとアナウンスした。

調査企業「Gartner」によるとAcerは世界のPCメーカーのなかで、出荷台数ベースで6位に位置している。しかし、PC市場が縮小するなかで同社はスマートフォンやクラウド向けデバイスにもチャレンジを重ねてきた。

Acerは2016年、スウェーデンのゲーム開発会社「Starbreeze」と合弁会社の「StarVR」を立ち上げ、VR関連ガジェットの開発を進めてきた。StarVRがターゲットとする市場は、家庭向けではなくショッピングモール等に設置されたVRアーケード向けの市場だ。

3月29日の声明で同社は「企業向け及び娯楽施設向けのVR製品に特化していく」と述べた。台北の市場調査企業「TrendForce」のアナリスト、Jason Tsaiは「StarVRのデバイスを用いれば、モールの運営者はより高い入場料をとれるようになる」と述べる。

「AcerはVR市場でB2B型のビジネスモデルを展開しており、コンシューマ向けの製品より高単価な製品を開発している」とTsaiは述べた。

調査企業「IDC」はVR及びAR(拡張現実)関連製品への支出額が、2017年の114億ドルから、2021年には2150億ドル(約23兆円)に伸びると見込んでいる。企業が従業員のトレーニング用に用いるヘッドセット需要も、2023年にかけて大きく拡大すると別の調査企業「ReportsnReports」も述べている。

StarVRのヘッドセットの性能は家庭向けのデバイスを大きく上回る。「PC市場での経験を活かし、Acerは高い品質のプロダクトを生み出した。解像度や画角の点で、他のコンシューマ向けデバイスを大きく上回っている」と台北のアナリストのCliff Kungは述べた。

IPOも準備中

AcerのVRヘッドセットは高額なデバイスだが、米国の「IMAX VR」や日本のセガのVRアーケードなど、世界各地のVR施設での需要が見込める。競合製品としては同じく台湾のメーカー「HTC」の製品があげられる。

「家庭向けのVRは主にゲーム向けの限られたマーケットだ。しかし、娯楽施設向けのVRは新規の参入者たちにとって、より大きな成長が見込める分野だ」とアナリストのKungは述べた。

VR市場が拡大するなかで企業に求められるのは、他のメーカーを真似るのではなく、この市場で確固たるビジネスモデルを生み出していく姿勢だ。StarVRは既にIPOの準備も進めているという。同社の動きを今後も注視したい。

編集=上田裕資

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