「勤務中にネットフリックス」の社員が発するメッセージ

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調査結果をうのみにしてはいけないことは過去の例から示されているが、それでも、動画配信企業ネットフリックスが発表し話題を呼んだ、同社サービス会員の視聴状況に関する調査結果は一見する価値はある。

ネットフリックスによると、同社が配信する番組や映画を自宅外でも視聴すると答えた米国在住の会員のうち、3分の1以上が職場で視聴したことがあると認めた。職場では磨き上げられた靴を履き、詰め襟のシャツを着てネクタイを締めるのが普通だった時代に働き始めた世代からすると、非常に衝撃的なデータだ。

ソファに座って友達としゃべったりテレビを見たりしながら働くことに慣れている若者にとっては、そこまで驚きではないのかもしれない。自分の端末で番組を見ることは、無益だったり単純だったり感じる作業をさせられていることへの正当な抗議だとさえ思っている人も多いかもしれない。

そこで問題になるのは、従業員のエンゲージメント(仕事への積極性)の低さだ。この分野では多くの取り組みが行われ、費やされる額も少なくない。それでも、従業員エンゲージメントはなかなか上がらず、仕事に熱心に取り組む社員の割合は概して、ネットフリックスを勤務中に見る人よりもはるかに少ない。

そもそも、従業員エンゲージメントが雇用主の望む基準に達していたことは、今まで一度もなかったのかもしれない。ただ、現代は技術の進化により、やる気の低い社員には、自分の業務に興味が持てないときに、他のことができるようになった。スクリーンの前に座った現代の従業員は、生産ラインで単純な繰り返し作業のみさせられていた昔の労働者に比べ、非常に多くの選択肢を持っている。

この「選択肢がある」という感覚も、エンゲージメント低下の一因だろう。従業員が取り組んでいる仕事は重要かつ興味深いものだと雇用主が主張するのであれば、実際の仕事がそれほど面白くも重要でもない場合、非難されても文句は言えない。

従業員は、上司の見解に反して自分の業務のすべてが退屈だと感じているかもしれないし、自分よりも他人の方が楽しい時間を過ごしていると思っているのかもしれない。いずれにせよ生まれる結果は同じで、エンゲージメントの低下だ。
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編集=遠藤宗生

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