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2018.04.10 12:00

ブロックチェーンが切り拓く、資本主義のその先

sdecoret / shutterstock


コミュニティの価値観を左右する「情報」の在り方
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さて、このシンボルをコミュニティ全体の共同幻想として根付かせるためには、それにまつわる情報を流通させる必要がありました。

『サピエンス全史』では人間が最初に、この情報流通の方法を「言語」「文字」を通じて身につけたことを"認知革命"と表現しています。

認知革命以来、情報流通とコミュニティの在り方は密接に結びつきながら、2度にわたるテクノロジー進歩によって、ドラスティックに変化してきました。1度目は「活版印刷」、2度目は「インターネット」です。
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そして、いま私たちは、3度目のテクノロジーの進歩に直面しています。それが「ブロックチェーン」です。

ブロックチェーンは、電子的な情報にある種の物理性(不可塑性・固有性)を与えます。ブロックチェーンによって発行される情報、ビットコインなどが「通貨」として利用できるのもこれが理由です。

このテクノロジーは、これまで一部の人間や機関にしか与えられていなかった機会と権利を、私たちにもたらそうとしています。

ブロックチェーンはコミュニティとルールの在り方を変える情報技術

第一に、私たちはコミュニティを象徴する「シンボル=通貨」を発行することができるようになりました。その通貨の価値は純粋にコミュニティ参加者によって決められ、コミュニティ内で価値交換を行う際の基準として運用されます。

これまで、シンボルの発行とそれに基づくコミュニティの固定化は、一部の権威ある機関にしか行なえませんでした。身近な例を出せば、2004年に既存の紙幣が一新され発行された時、新しい紙幣にこれまで同様の価値がある、と私たちが認めたのは、日本円を取り巻くコミュニティを中央集権的に運営する日本銀行が発行したものだったからです。

ブロックチェーン技術は、このような中央集権的な機関に依らずとも、コミュニティ内の価値を象徴し、基準として機能するシンボルを生み出すことを可能にします。

第二に、ブロックチェーンは、スマートコントラクトを通じて、権威的な存在を頼ることなく、コミュニティに対してルールを執行することを可能にします。

既存のスキームを例にとると、日本国は大きくは資本主義というルールを持っていますが、それらを成立させるために法律が存在します。そして、その法律に国民が従うように警察や裁判所といった執行機関が機能しています。ルールを正しく運用するために、多大なコストが存在しているのです。

ブロックチェーンと関連して登場した概念として、「スマートコントラクト」があります。このスマートコントラクトと呼ばれるものは、プログラミングによって規定されたルールを、管理者なしに執行するものです。簡単にいうと、人ではなくロボットが、予め決められたルールに従って物事を処理してくれるということです。

これまでは、ルールを作ったものの、それを正しく運用することにも多大なコストがかかっていました。ともすれば、「ルールを正しく運用するためのコストを支払える存在しか、ルールを作ることが出来ない」ことになります。国会が「法律」だけでなく「予算」を決めるのは、これが理由です。

しかし、スマートコントラクトが規定するルールは、維持や執行に人の手を必要としません。そのルールに参加したい、利用したいという人に対して、自動で適用されるのです。ブロックチェーンによる分散化の本質は、ここにあります。

この代表例が、ビットコインです。ビットコインを考案したのはサトシ・ナカモトですが、サトシ・ナカモトという存在がどこかで監視をしていたり、管理をしていたりするわけではありません。

彼は「ビットコインとは何なのか」「どのように利用するのか」、その方法を最初に設計しただけで、ビットコインというシンボル、コミュニティ、ルールを意のままに操ることはできません。ビットコインの行く末は、そのコミュニティに参加する人たちが決めるのです。

ブロックチェーンとスマートコントラクトにより、「どのようなコミュニティで、どのようなルールに従い、何を信じて生きるか」にまつわる選択肢を、個人が自由に生み出せる、そんな時代が到来しつつあります。

ブロックチェーンのもたらす分散化は、有史以来、「特定の権威によらないコミュニティの創出」「権威機関を必要としないルールの執行」を初めて実現し、あらゆる主体の選択肢と可能性を平等化していくことになります。

ブロックチェーンによってもたらされた機会と権利によって、個人ないし組織はどのような新しい可能性を切り拓くことができるのか。

こうしたテーマについて、次回以降さらにお話したいと思います。

文=森川夢佑斗

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