生まれつき権威的な性格を持つ人もいるようだ。性格は、育った環境に大きな影響を受けるとも言えるが、そうであれば兄弟姉妹の中にもリーダータイプや追従者タイプが存在する理由が説明できない。
私の兄シャビは生まれつきのリーダー格で、私は生まれつき人について行くタイプだった。一つの重要な違いは、私は両親の言うことを聞いていたが、シャビは両親にあれこれ指図していたことだ。
私にも、新たなおもちゃやアイスクリームが欲しいと駄々をこねることはできたが、なぜか私は本能的に、力のある人物に何かをくれるよう頼んでいた。シャビは幼い頃から、力を持つ権威的な人間になっていた。
このことから私は、学校や大学、企業や組織などは「リーダーの育成」にあまり多くの時間や労力を投資すべきでないと思うようになった。リーダーを育成する必要はほとんどないからだ。リーダーは幼い頃から、すでに出来上がった状態で現れる場合が多い。
リーダーシップ業界が真の価値を持つには、次の2つの問題に対処しなければならない。
1. 天性のリーダーが持つ自信とカリスマ性が、追従者を間違った方向に導かないようにするため、健全な企業がどうやって指針(ガードレールのようなもの)を提供するか。
2. 後からでも身につけられる天性のリーダーの特徴を、生まれつきリーダー性を持たない人材にどう理解させるか。
私の昔のメンター、ウォーレン・ベニスはかつて「リーダーシップが教授できるものかどうかは分からないが、つかむことはできると思う」と語った。経営学修士(MBA)の学生は、著名な理論家や最新のベストセラー本を研究するよりも、4歳のエルを観察することで、リーダーシップの極意をより簡単につかめるのではないか。
最後に、経験よりも理論を、逸話よりもデータを好む人向けに述べておくと、カンザス州立大学の研究チームは2015年、規則を自分で作ったり破ったりする子どもと比べて、規則に従う子どもはいわゆる「最高経営責任者(CEO)の遺伝子」が欠けている傾向があることを発見した。(とはいえ、こうした遺伝子理論を絶対的に正しいものと考えることはできない)