目撃者がソーシャルメディアに投稿した写真には、天井部分にLiDARセンサーを乗せた白いボディの車が写っている。車体の全部と後部にはカメラや他のセンサー類が装備されていた。ナンバープレートはテンセントが研究施設を置く湖北省のものだった。
テンセントは昨年11月に自動運転車両の研究開発拠点を北京に開設していた。同社は「ドライバーが乗車しない自動運転車」と「高度なドライブアシスタント機能を持つ車」の2種類を開発していくと述べていた。
今回目撃された車両には人間のドライバーが乗車し、両手をハンドルの上に載せていたと写真の投稿者は述べている。
米国ではウーバーやテスラの自動運転車両が相次いで死亡事故を起こし、安全面での課題も浮き彫りになるなかで、北京の交通当局は3月に初めて自動運転車両の走行許可ライセンスを発行していた。その発行が、ウーバーの死亡事故の数日後だったことは中国政府の「この分野で米国に遅れをとるまい」という意思の現れともみられている。
報道によるとバイドゥは既にこのライセンスを取得済みで、北京市の指定エリアの全長105キロに及ぶ道路で、自動運転の走行テストが許されたという。
中国では上海市でも3月上旬に自動運転のライセンスが発行され、現地の「SAIC Motor Corp」やEVスタートアップの「NIO」らがテスト走行を行っている。
中国の自動運転分野のパイオニアと呼べるのはバイドゥだ。同社は昨年4月、自動運転関連のソフトウェア開発をオープンソース化する「アポロ」プロジェクトを始動。ドイツの自動車部品メーカーの「ボッシュ」や半導体メーカーの「エヌビディア」、LiDARメーカーの「ベロダイン」の参加も発表された。
また、中国のチェリー自動車(奇瑞汽車)やFAW Group(第一汽車)なども加わり、合計で50社以上がバイドゥの自動運転車プロジェクトに関わっている。
テンセントの自動運転技術に関する情報はごく限られているが、同社は2017年3月にテスラの株式の5%を取得したほか、配車サービスの「滴滴出行」にも出資を行っている。関係筋によると同社はマッピングやAI(人工知能)技術を活用した、自動運転テクノロジーの開発にあたっているという。
中国では年間約26万人が交通事故で死亡しているとの報道もあり、交通の安全性を確立する上でも自動運転の導入が期待されている。