マイクロソフトも今年1月10日、台湾にAIの研究拠点を開設すると宣言した。同社は今後の2年で100名を台湾で雇用し、5年間で200名規模にまで拡大する。マイクロソフトは現地のR&Dセンターでの雇用に向け、3400万ドル(約36億円)を用意したと述べている。
さらに、IBMも3月に台湾にR&D拠点を設け、AIやブロックチェーン、クラウドテクノロジーの開発を行うとアナウンスした。同社は台湾で今年、100名を新規に雇用する。
米国の大手テクノロジー企業3社が、一斉に台湾での雇用に力を入れるのには理由がある。まずは、優秀な人材獲得が容易であることだ。「台湾のエンジニアらはAIなどの新たな領域に迅速に対応する能力を持っている」と台北のシンクタンク「Yuanta-Polaris Research Institute」のKuo-yuan Liangは話す。
Liangによると台湾の平均賃金が比較的安い点も企業のメリットになるという。現地の大学で基礎的なエンジニアリング知識を得た学生も多く、企業の現場にスピーディーに投入しやすい。
マイクロソフトの中国地域のチェアマンを務めるAlain Crozierも、優秀な大卒人材が獲得しやすいことを理由に、台湾を選んだとメディアの取材に述べていた。
「ハードウェアとソフトウェアの双方で、台湾はアジア地域のなかで最も優れた人材にアクセスしやすい場所でありコストも安い。東アジアでデータセンターを開設するとしたら、台湾こそがベストな場所だ」と台北の銀行のエコノミストのTony Phooは述べた。
さらに、2016年5月に台湾の総統に就任した蔡英文もテクノロジー分野へのサポートを明言している。蔡の指揮下で台湾は2023年までに「アジアン・シリコンバレー・ビジネス・ゾーン」を開設し、IoT分野のビジネスを活性化させようとしている。
政府の「Invest Taiwan」のウェブサイトで、台湾の財務省もテクノロジー企業の人材獲得を支援していくと述べている。
台湾政府は従来の製造業が拠点を海外に移すなかで、先端テクノロジー分野を支援することが得策だと判断した。これにより政府は今年のGDPを、6130億ドル(約66兆円)まで押し上げたい意向だ。
米国企業としても中国との貿易戦争の懸念が高まるなかで、台湾の魅力は増している。中国でのビジネスは政治的プレッシャーに加え、知的財産権の保護やデータのセキュリテイ面での課題も多い。
台北のシンクタンクのLiangは、「台湾は企業らに安心してビジネスが行える環境を提供できる」と述べた。
グーグルやIBM、マイクロソフトらが一斉に台湾に乗り込んだことにより、今後はさらにこの流れに加わる企業が現れそうだ。