ステーブルコインは米ドルなどの法定通貨に対し常に一定の価値を持っているため、資金を安全に保管したい場合や取引所などでの基軸通貨として利用できる。
その最新の事例としてあげられるのが、3月に取引所の「Bittrex」に上場を果たした「TrueUSD(TUSD)」だ。発行元の「TrustToken」はスタンフォード大学出身のエンジニアやビッグデータ企業の「Palantir」、さらにグーグルの元社員らが2017年に設立した企業。同社は会計監査機関とも連携し、価格が一定のコインを普及させようとしている。
ステーブルコインの先駆けといえるのが、同じく米ドルに対して一定の価値を保つ「Tether(テザー)」と呼ばれるコインだが、取引所のBittrexがテザーに加えて、TrueUSDを上場させた背景には、ある思惑も見えてくる。
それは1種類のステーブルコインに依存することから生じるリスクを、軽減したいという狙いだ。
テザーの発行総額は現在23億ドル(約2460億円)に達しているが、その価値の裏づけに対する疑念が高まっている。関係筋からはテザーと取引所の「Bitfinex」の親密すぎる関係を問題視する声が高まっており、テザーの今後を危ぶむ見方も強い。
テザーに対する疑惑は、同社が準備金以上のコインを不正に発行しているのではないかというものだ。また、テザーとその親会社であるBitfinexが結託し、違法な利益を得ているとの見方も浮上した。アメリカの商品先物取引委員会(CFTC)は既に両社に対し召喚状を発行している。
今後はテザーの保有者らが避難先としてTrueUSDに乗り換える可能性もある。TrueUSDは保有者らに対し、完全な抵当権や定期的な監査、米ドルとの交換についての法的保証を与えている。
TrueUSDはイーサリアムのスマートコントラクトを用い、保有者の米ドルを安全なアカウントに保管している。運用にあたっては、TrustTokenの信託パートナーと連携し、米ドルの返還を求めればただちに返還される仕組みだ。
TrustTokenは先日、同社の公式ブログで米国の規制当局のMSB(マネー・サービス・ビジネス)への登録手続きを進めていると発表した。登録が完了すればTrueUSDの信頼性はさらに高まることになる。
TrueUSDのようなステーブルコインが信頼性を確立できれば、今後の仮想通貨経済において大きな役割を果たすことになりそうだ。