ビジネス

2018.04.06

英国でウーバーに勝訴の元ドライバーが語る「戦い抜く決意」

ヤシーン・アスラム(Photo by Carl Court/Getty Images)


投げ出せば全てが無駄に

さらに、無駄になる可能性があるのは時間だけではなかった。アスラムは英国の労働組合Independent Workers Union of Great Britainの支援を受け、ウーバーのドライバーで組織する非公式の労組「United Private Hire Drivers (UPHD)」を立ち上げたが、そのことで2017年には、一部のドライバーたちの間で悪名高い存在になっていた。

ウーバーはアスラムに対し、「自社を恨み、ずけずけとものを言う孤立した批判者」との烙印を押した。そして、ウーバーのドライバーたちの多くにとって、アスラムは自分たちの生活を危険にさらすただのトラブルメーカーだ。

それでもアスラムは、「途中で投げ出せば、あらゆる批判を受けるだけで他の何を得ることもない」「僕たちは全ての人に利益をもたらす将来のために、何かをしたのだということを確認したい」と話す。

取材の後、彼はUPHDの全国幹部会を開き、地元のドライバーたちと話し合うためにリーズに向かった。UPHDの活動の一環として、ノッティンガムやマンチェスターなどその他の都市も訪れ、地元のリーダーたちと協議している。

アスラムはどの都市でも、ドライバーたちについてもっと多くのことを知りたいと考えている。出張で収入が得られるわけではないが、「多くの人の生活に価値を提供している、彼らの生活を変えている」と思い、活動を楽しんでいる。

アスラムは不当な行為に気づき、それについて何かをしようとしたにすぎない。皮肉なことに、その決断によって自らの30代の時間の大半を、すでに自分の仕事とは関わりのない業界の労働者の権利のために、費やしてしまうことになりそうだ。

それでもアスラムは、「ドライバーたちが評価してくれてもそうでなくても、彼らを支援できればうれしい。この先、自分の過去を振って、胸を張ることができるからね」と語る。

「先のことは分からないよ。(最高裁で)勝訴すれば、またドライバーを始めるかもしれない」

編集=木内涼子

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事