閉じる

PICK UP

I cover fintech, crypto and the sharing economy for Forbes Europe.

ヤシーン・アスラム(Photo by Carl Court/Getty Images)

ヤシーン・アスラムは、まるでセレブリティーのように見える。ロンドン北部を歩けば多くの人たちに声をかけられ、握手を求められる。

数千人のフォロワーがいるアスラムは、日常の出来事についてツイートし、動画を配信する。さらに、彼には3年ほど前から撮影のために密着しているドキュメンタリー映画の監督がいる。撮影はあと3年間近く続く見通しだ。

だが、アスラムはセレブでもインフルエンサーでも、リアリティー番組のスターでもない。米配車サービス大手、ウーバーの元ドライバーであり、ほぼ単独で時価総額480億ドル(約5兆1300億円)の同社に“勝利“した人物だ。そのことで、彼は多くの人にとってのヒーローとなっている。

「ヒーロー」の苦悩

現在はITコンサルタントとして働き、国防省の仕事も請け負うアスラムは、自分を良い人間だと思うことはないという。反ウーバーの活動を行ったことで、家族は経済的に苦しい状況に陥り、自らはうつ病の症状の発作に苦しんできた。

アスラムは2015年、もう一人の原告とともに、ロンドンの雇用審判所にウーバーを提訴。ドライバーは自営業者ではなく「労働者」であるとして、ウーバーに最低賃金や有給休暇の保障を求めた。

そして、雇用審判所は翌2016年、アスラムらの主張を認め、ドライバーは労働者だとする判断を示した。だが、膨大な資金力を持つウーバーはすぐに控訴。最高裁まで争う方針を明らかにした。

アスラムがこの戦いの難しさを最も痛感したのは、このときだったという。

「誰もが僕は正気ではないと思っていた。ウーバーが判事を買収するだけだろうと言われた」

「でも、それまでにしてきた全てのことを振り返って、そこでやめたら費やした時間の全てが無駄になると思った」

アスラムは審判所の裁決を前に、ウーバーのドライバーをやめていた。新しい仕事はすぐには見つからず、生活費のため、所有していたトヨタのプリウスを手放すしかなかった。

編集=木内涼子

あなたにおすすめ

合わせて読みたい