人のつながりで、仕事に変化を起こすには?

3月16日に都内で開催された「Sansan Innovation Project」



丸山裕貴/Eight コンテンツストラテジスト、BNL編集長

「顔と名前も一致しない人」との交流量をいかに増やすか

名刺でつながるEightは、友達としてつながるフェイスブックやクリエイターが集うAdobeのコミュニティと比べると接点が少ない、いわゆる“弱いつながり”の多いSNSである。名刺交換というものの性質上、なかには一度しか会ったことのない人や、顔と名前が一致しない人も含まれている。

しかし、そんな「顔と名前も一致していないような人」との交流からこそ、イノベーションにつながるような新たな知見が得られるはずだ。例えば、いまのビジネスの課題を何気なく吐露したら、それがまったく異なる分野で悪戦苦闘している誰かの解決のヒントになるかもしれない。あるいは、自分の興味関心を継続的に発信していたら、想像もしなかったところからその能力を活かせる新たな仕事の依頼が舞い込むかもしれない。Eightが考える“弱いつながり”のメリットとは、このようなもののことである。

一方で当然だが、「顔と名前も一致していないような人」と交流することのハードルは高い。「顔と名前も一致していないような人」との交流量をいかに増やすか。これがEightの取り組んでいる挑戦だ。

「もともとつながりが強い人たちとは、放っておいても交流量は増えるんです。私たちの課題は、名刺交換はしたけど顔も名前も覚えてないみたいな人と何を話したらいいのかっていうところなんですよ。そこは一つ挑戦で、まだ多分どこも答えを出せてないと思うんです。顔も覚えてない人に、自分はどんな情報を与えられるだろうか。その人からどういう情報をもらえるだろうか」(丸山)

最近になってEightが導入した「企業タグ」は、そうした試みの一つ。これを使えば、直接会ったことはなくても、その企業の誰かと名刺交換をしたことのあるすべての人に、その情報を届けることができる。


村上臣/リンクトイン カントリーマネージャー

世界と日本をつなぐ「窓」が新たな機会をつくる

世界で5億6000万人のビジネスパーソンが利用するリンクトインは、こと日本においては(他でもない児玉が率いたフェイスブックがビジネスユースに力を入れる戦略をとったことにも押されて)長らく苦戦してきた。

昨年11月にカントリーマネジャーに就任した村上臣は、いま何を考えながら、国内戦略の巻き返しを図っているのだろうか。

「世界と日本をつなぐ窓になりたい」と村上は言う。

「いま、日本はわりと暗い雰囲気にあって、人口が減るとか言われている。じゃあどうするんだということでいうと、やっぱり海外から優秀な人を引き込むっていうのが大事だと思うんです。僕がなんでヤフーからリンクトインに転職したかっていうと、将来世界に対する『窓』、行き来する『窓』が必要だと思っていて、日本の人ももっと世界へ出ていくべきだし、その逆も然りだよね、というふうに考えたからなんですよ」


この日、初めて社外に公開したという統計資料。日本語を扱える人はこれだけ世界に広がっている。

村上が紹介したリンクトイン上のデータによれば、日本国外には約30万人の、ネイティブレベルで日本語を話せるビジネスパーソンが存在するという。彼らは世界のかなりの広範囲のエリアにいて、なおかつ職能・職種も幅広い。

彼らと日本とをつなぐことができれば、それだけで新たなビジネスの機会が生まれるだろうし、それが日本を覆う閉塞感を打破する起爆剤にもなりうる。リンクトインの世界的なネットワークを使えば、それが可能になると村上は言う。
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文=鈴木陸夫 写真=吉岡晋

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