「To give people the power to share and make the world more open and connected」から、「To give people the power to build community and bring the world closer together」へ。
CEOのマーク・ザッカーバーグはそれまで、人々につながるためのツールを提供すれば世界はおのずと良くなっていくものと考えていたが、社会はいまだ分断されており、世界をより良いものにするためには単につなげるだけでは不十分で、そのつながりを強める努力が必要だと確信したのだという。だからフェイスブックは、コミュニティづくりの支援にこれまで以上に力を入れていく。同社のミッション変更には、こうした意図が込められているとされる。
そのような“強いつながり”の必要性が叫ばれる一方で、ビジネスにおける“弱いつながり”の価値の大きさというのは、BNLでも繰り返し取材し、報じてきた通りだ。
経営学者の入山章栄はBNLのインタビューで、「弱いつながりをたくさん持っている人は、普通は手に入らない情報をたくさん入手できます。イノベーションは既存の知と知の組み合わせで起こるため、弱いつながりを多く持っている人の方が基本的にイノベーティブなんです」とそのメリットを語っている。
ビジネスにおいて本当に役立つのは“強いつながり”か“弱いつながり”か。そのようにしてどちらか一つを選ぶということではないにしても、それぞれのつながりをどのようにして自らのビジネスに活かしていけばいいのかというのは、ぼくらがいま向き合わなければならない重要な問いであるように感じる。
BNLとForbes JAPANはこうした問題意識の下に、3月16日に開催された「Sansan Innovation Project」において、共同セッションを実施した。
登壇者は、元ヤフー執行役員でCMO(チーフモバイルオフィサー)としてモバイル戦略をリードし、昨年リンクトインのカントリーマネージャーに就任した村上臣、国内1号社員としてフェイスブックの日本展開を率い、昨年キックスターターのカントリーマネージャーに就任した児玉太郎、日本を担当する初のコミュニティマネージャーとして活躍するアドビの武井史織、BNL編集長でEightのコンテンツ戦略をリードする丸山裕貴の4人。モデレーターはForbes JAPAN編集次長、九法崇雄が務めた。
「人のつながりで、仕事に変化を起こすには」と題して行われた当日の議論の模様をダイジェストでリポートする。
児玉太郎/アンカースター代表・キックスターター カントリーマネージャー
コミュニティには「背中を押す存在」が必要だ
2010年にフェイスブック日本支社の立ち上げを任された児玉太郎は、わずか4年間でサービスを飛躍的に成長させた。退職した翌年には、海外企業の日本進出担当であるカントリーマネジャーを支援する会社、アンカースターを設立。さらに昨年からはキックスターターのカントリーマネジャーに就任し、自ら舵を取っている。
これからは会社にとって、「コミュニティマネジャー」がさらに重要な役割を果たすようになる、と児玉は言う。どういうことだろうか。