IT業界が「プログラミング教育」で立ち上がるべき理由

サイバーエージェントの藤田晋社長(左)とCA Tech Kidsの上野朝大社長(右)


自分の子にもプログラミングを学ばせたい

──2013年にCA Tech Kidsを立ち上げました。サイバーエージェントもさまざまな事業が一段落して「そろそろ社会貢献も」という空気感が社内に醸成されてきたことが背景にあったのでしょうか。

藤田: そうですね。会社も割と利益が出て安定してきたので、役員会で「社会貢献できることはないか?」という話になったとき、我々がやる意味のあるものを探して出てきたのがプログラミング教育でした。

上野: CA Tech Kidsは創業からちょうど5年ですが、創業時は国の方針としてプログラミング教育必修化は決まっていませんでした。(藤田に)始めるタイミングとして少し早すぎるのでは、という懸念ありませんでした?

藤田: (理事を務めている)新経済連盟でもプログラミング教育の話は出始めていたから。僕もその議論に加わっていたので、「これなら力になれるかな」と思った記憶があります。この5年でいちばん特徴的なのは、友人の経営者などから、「子どもをTech Kids Schoolに入学させたいので紹介してほしい」と頼まれることがすごく増えた点ですね。世の中一般では、まだニッチな習い事のひとつぐらいでしかないかもしれませんが、私の周りでは、将来を見据えてプログラミングを身に付けさせた方がいいと考えている人がほとんどではないでしょうか。

──それは必修化を見据えてお稽古事として学ばせているのでしょうか?

藤田: 必修になるから習わせようという考え方ではないですね。いま起きている社会変化や、その中でプログラミングが重要になるということが分かっていて、自分たちの子供にプログラミングを学ばせようとしているわけです。僕だって自分の子供にプログラミングを勉強させようと思っていますよ。

上野: 2012年頃、新卒エンジニアに初任給1000万円を支払う会社も出るような“エンジニア争奪合戦”がIT業界で起きました。そういう文脈から、「IT人材が足りない」、「プログラミング教育が不足している」という課題感は業界全体であったと思います。しかし、だからプログラミング教育を自前でやろうという会社はIT業界の中でも少なかったと思います。

CSR活動の一環でやっている会社はありましたが、我々のように営利事業化して取り組むケースは、ほぼ皆無でした。ただ営利事業化したとは言っても、お恥ずかしながらビジネスとして黒字化したことは創業以来一度もありません(笑)。あくまでサイバーエージェント全社のポートフォリオの中で成り立っている状況です。そういった点でも、CA Tech Kidsの在り方は、業界の中でも稀有と言えるかもしれません。

私も5年やってきて、現状ではビジネスとしては難しいという結論に至りました。やりようによっては可能なのでしょうが、市場規模も含め、サイバーエージェントが展開している広告代理事業やゲーム事業のような他の事業ほどの利益を出すのは簡単ではないと感じています。

藤田: 実際、プログラミング教育事業で儲けろと言ったことは一度もありません(笑)。

上野: だからこそ、今まで成立してこられたわけなのですが(苦笑)。とはいえ、私も一人の経営者として「ビジネスとしても諦めない」という意地があります。なるべく早く黒字化させ、一人前に利益も出せるような事業にしていきたいと考えています。
次ページ > 世界と比較して低い日本のITエンジニアの立場

インタビュー=井関 庸介 写真=鷲崎浩太朗

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事