・雇用(短期的には問題ではない)
米経済が完全雇用に近い状態にあるなか、アマゾンが国内の雇用を奪っていると主張することは難しい。さらに、アマゾンはテクノロジー企業であることから、同社の従業員は実店舗のレジ係よりも、「高賃金と充実したキャリア」につながる新しいスキルを身に付けている。また、雇用の点で言えば、アマゾンは向こう1年半の間に新たに10万人以上のフルタイムの従業員を採用する計画だ。
一方、自動化への投資を続けるアマゾンは、長期的には間違いなく、労働市場に悪影響を及ぼすことになる。ただし、それはトランプではなく将来の大統領が直面する課題になるだろう。
・小規模企業(複雑な問題)
アマゾンは従来型の小売業者を窮地に追い込んできた一方で、マーケットプレイスを通じてそれらに顧客へのアクセスを提供している。そして、実店舗を運営する数多くの小売業者に電子商取引を可能にしている。結局のところ、小売業者の苦痛の責任を、アマゾンだけに負わせることは難しい。
トランプがベゾスとアマゾンに向ける敵意には恐らく、ベゾスのもう一つの事業、米紙ワシントンポストが関係しているのだろう。
「戦い」に勝つのはアマゾン
ベゾスとトランプは、それぞれが携わる分野で成功を収めてきた。トランプが成功したのは、伝統的なビジネスである不動産開発だ。一方、ベゾスは革新者だ。既成の体制に挑戦し、新たにインターネット・リテールエコノミーを生み出し、変化の準備が整った業界に大きな変革をもたらしている。
トランプがベゾスに何を仕掛けようと、ベゾスはそれに立ち向かう準備ができているはずだ。トランプとの“戦争”の結果、意図しなかった結果がもたらされても、その中にチャンスを見出すだろう。