ビジネス

2018.04.06 12:00

デンマークが「世界一クリエイティブな国」と評されるワケ



建築事務所として使われている部屋。「Feel Free to Fuck Up」という看板(写真右上)は、Institut for(X)のいたるところに掛かっている。

しかし、一度マインドセットを共有していることが認められれば、入居者には最大限の自由が与えられる。「“X”はその人次第だ」とジョナスは言う。

Institut for(X)で過ごすクリエイターたちに課せられた決まりは、「ルール・ゼロ」と呼ばれるものひとつだけ──つまり、「ルールをつくってはいけない」というルールである。

何をやるかも、場所をどう使うかも、運営側や周りの入居者との「民デモクラティック主的なディスカッション」によって決められていく。Institut for(X)のマインドセットを言葉で書き表すのは難しいが、ジョナスによれば、彼らはみな「エネルギーに満ちあふれていて、人と違うことをやりたいと思い、まず実践してみるような人たち」だという。

自由に生きながらも、クリエイティブの価値を示すことで周りの社会と共存する。そんな現代のヒッピーたちの聖地はいま、「ブルドーザー・デイ」を迎えようとしている。18年のクリスマスイブに、敷地の半分が撤去されることが決まっているのだ。「でも、みんなはまったく気にしてないんだ」とジョナスは言う。

「Institut for(X)は、常に変化し続けてきた。ブルドーザー・デイはたしかに大きな変化だけど、それでも、ただの変化だからね」

「オルタナティブ」を生み出す3つの学校

1. カオス・パイロット世界で一番刺激的なビジネススクール



1991年開校。先の見通しがつきにくいカオスな時代をナビゲートできるリーダーの育成を目指す。ビジネススクールとデザインスクールの考えを統合した3年間のカリキュラムが特徴。これまで約900人の卒業生を輩出しており、米Ode Magazine誌は「世界でカオス・パイロット最も刺激的なビジネススクール」と評した。

2. IPC大人も通える“もうひとつの大学”



デンマーク国内に約70あるフォルケホイスコーレと呼ばれる成人教育機関のひとつ。授業はすべて英語で行われ、現在、30の国々から、約100人の生徒が学んでいる。入学試験や成績表はなく、ほかの生徒と寝食をともにし、人文科学やアート、スポーツなどを学んで過ごす。

3. 自由高校|校則も、校長も、生徒が決める高校



1970年開校。中学部・高学部を合わせ、生徒数は約850名。最大の特徴は「民主主義制」であること。学校運営の方針はすべて生徒と先生の投票で決める。保護者の大多数は、コペンハーゲンの知識層が占め、生徒の成績水準はデンマーク国内で10位内に位置するといわれる。

文=宮本裕人 写真=デイヴィッド・シュヴァイガー

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