売上10兆円も間近、中国ファーウェイが「増収増益」の理由

(Photo by Chesnot/Getty Images)

中国のファーウェイは、新フラッグシップ端末の「P20」シリーズの発表イベントをパリの「グラン・パレ」で開催し、名実ともにプレミアムブランドになったことを世界に印象づけた。会場には2000名を超えるメディア関係者が集まり、期間中はヨーロッパ全土にファーウェイのビルボードが出現した。

最上位モデルの「P20 Pro」は価格が1100ドル(約11万7000円)を超えるが、業界関係者の間からこの端末はiPhone Xと同等の価格になると予想されており、驚きの声は聞こえてこない。ファーウェイは米国進出が頓挫したものの、テック系記者の評価も高く、端末の販売は絶好調だ。

同社は3月30日朝、深セン本社で年次事業報告会を開催し、2017年の売上高が前年対比15.7%増の925億ドル(約9兆8360億円)、純利益は対前年比28.1%増の73億ドル(約7760億円)になったと発表した。特に注目を集めたのが純利益成長率で、2016年の0.4%から飛躍的に増加した。

同社のケン・フーCEOとサブリナ・メンCFOによると、コストコントロールをしながら効率よく端末の販売台数を増やせたことで、売上高成長率を超えるペースで純利益と売上高純利益率を伸ばすことができたという。

「2016年には、部品コストの上昇がコンシューマ・ビジネスグループの利益を押し下げた。このため、我々はサプライチェーンマネジメントを改善し、ベンダーとの関係強化に取り組んだ」とメンは述べた。

また、フーによるとブランドイメージの向上も寄与し、ファーウェイとサブブランドの「Honor」を合わせて1億5300万台の端末が売れ、売上高は378億5000万ドル(約4兆250億円)に達したという。

ネットワーク機器売上は約5兆円

しかし、非公開企業であるファーウェイにとって最大の収益源は依然としてネットワーク機器で、昨年は約470億ドル(約4兆9800億円)を稼ぎ出した。ただ、成長率は3%と他部門と比べてかなり見劣りする。クラウドとデータを手掛けるエンタープライズ事業部門の売上高成長率は35.1%だったが、売上高は87億ドル(約9200億円)と同社の中では小規模だ。

フーによると、ファーウェイは来年以降の5G実用化に向けて準備を整えており、それまでの間はスマートフォン事業の成長率が最も大きくなるという。

ファーウェイは米国進出が頓挫したものの、スマートフォンの出荷台数はアップルを抜いて世界2位となった。ミドルレンジとエントリーレベル向け市場を捨て、ハイエンド市場に特化する戦略がこれまでのところは成功している。

ファーウェイは今年、設立30周年を迎える。中国では孔子の格言に「三十にして立つ」という言葉があるが、同社も新たな成長を模索している。
 
「2018年中には、IoTやクラウドコンピューティング、AI、5Gなどの先端テクノロジーが大規模に実用化されるだろう。顧客がデジタル化を推進する過程で直面する課題を克服し、成功を収めることを支援するのが我々の役割だ。我々にとって究極のゴールは、全ての人や家庭、組織にコネクテッドでインテリジェントな環境を提供することだ」とフーは話した。

当面はこのビジョンの中に米国は含まれていないが、ファーウェイにとって大きな問題ではないようだ。

編集=上田裕資

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