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2018.04.05

過熱し続ける医学部受験 合格率7%、超難関の真相

Iakov Filimonov / shutterstock

医学部入試が過熱している。学齢人口は減っているのに、医学部への入学志願者は、20年前の約9万人から増えており、ここ数年、13万人程度で推移している。日本の医学部入学定員9420人(2017年)に対し、約14倍の受験生が殺到しているのだ。

入試倍率は、国公立の前期試験で約5倍、後期試験では約18倍、10年間ほぼ横ばいの数字となっている。私立大学の医学部となると、2桁台の倍率は普通で、一般入試(推薦入試やAO入試ではない通常の冬の入試)で50倍を超える場合もある。

平均すると合格率7%という狭き門である。司法試験の合格率25.9%(2017年度)と比べても、4倍近い開きがある。全大学の医学部の最低偏差値は62.5(河合塾による)で、全受験生の上位約10%に相当するレベルだから、大学受験を志す10人のうちで1番になれば、医学部に入れるかもしれない、と考えてもよい。

大学全入時代と言われるようになって久しいが、医学部だけはほぼ例外で、超難関であり続けているのである。

医学部入試が過熱する前、団塊ジュニア世代の筆者(1990年前後に高校卒業)が大学受験を迎えたころまでは、まだ私立の医学部などであれば、偏差値50を下回る大学もいくつか存在した。しかし、現在は、一番入りやすい私立医学部でも、偏差値が62.5。それより下はない。早稲田や慶応の理科系の偏差値とほぼ同等である。コネ入試がまかり通っていた昔と違って、コンプライアンスや情報公開に厳しい現在は、ごく少数の場合を除き、学力がなければ合格は不可能だ。

大人の受験生も増えている

筆者は、大学院生のアルバイト時代から含めると、20年近く、医学部受験の推移をウォッチしてきた。会社員をしていた時期を除いても、10年以上学生を直接指導し、そのうちの多くの受験戦略に関わっているが、肌感覚でも、医学部入試の難しさはここ20年変わっておらず、とくにこの10年は難化の一途を辿っていた。

ある進学校の理系トップクラスでは、3分の2が医学部を志望しているという。東大の理科系(医学部に進学できる理科Ⅲ類以外)に合格できる受験生が、あえて地方の国立大医学部を受験して進学するケースも出てきている。成績がいい生徒は、ただそれだけの理由で、高校の進学実績を稼ぐために医学部進学を勧められる場合もある。当然、医学部進学者が多い高校は人気がある。
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文=原田広幸

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