キャリア・教育

2018.04.15 17:00

MCMを復活させた韓国女性起業家が大切にする3つのこと


ご結婚後に起業され、現在は韓国でも屈指のブランド・インポーターとして成功を収めていらっしゃるわけですが、1997年の通貨危機に巻き込まれた際には、どのような対応で障害を乗り切ったのでしょうか?

ソンジュ:破産寸前に追い込まれたような状態でしたが、経営者の基本としてとにかく冷静に状況に対処するよう自分に言い聞かせました。でも、ラッキーな事にブランド力の高い「グッチ」と販売契約を結んだお陰で、従業員を解雇する事なく危機を切り抜け、通貨危機で発生した損失を帳消しにする事ができました。

2005年にはドイツ名門ブランド「MCM Holding AG」を買収し、現在は世界40か国に500店舗のブティックを展開する一大ブランドに育て上げています。高額な買収資金を要するビジネス・リスクへの挑戦について、経営者としてのお考えを聞かせて頂けますか?

ソンジュ:当時の私が持っていたのは「グッチ」との仕事から得たブランド・ビジネスへの経験と「リスクを恐れないガッツ」のみでした。でも、ブランド志向の強いアジア・マーケットでは「ヨーロッパの歴史あるブランド力」で絶対に勝負できるという確信があったんです。とにかく、失敗を恐れない“やる気”が私のビジネスを後押ししてくれているのだと思います。

ご自分の経験を通して、ビジネスの成功への秘訣は何だと思いますか?

ソンジュ:3つあります。「どのような状況でも冷静さを忘れない事」「リスクを恐れない事」「失敗から学ぶ努力をして前進する事」。

特に、失敗を恐れずガッツを持つ事が何よりも大切なのではないでしょうか。泣いても笑っても人生は一度切り。私は常に「やらない後悔」より「やる後悔」を選択して生きているんです。

社会貢献活動にかなりの力を注いていらっしゃるようですが、その情熱の源は何でしょうか?

ソンジュ:私は裕福な家庭で育ったけれど、必要以上に贅沢な暮らしを許されていたと言うわけではありません。それは一重にカソリックの教育を受けた私の母の「ノブレス・オブリージュ(社会的地位の保持には責任が伴う)」という精神が基本で、母から受け継いだ遺伝子のようなものではないかと思います。

だからアジア女子大学(Asian University For Women、AUW)を支援する事は私にとってほとんど義務感に近いものがあるんです。才能ある多くの女性たちが高等教育を授かる機会を手にして、将来の社会の礎になってくれれば、これ以上の喜びはありません。今年はAUWに20万ドルの寄付をしましたが、将来的にはさらに大きな支援をしていきたいと思っています。

ご自身の人生の"モットー"について教えて頂けますか?

ソンジュ:私の人生のモットーは3つの“C”。 「Creative(独創性)」「Crazy(既成概念に縛られない自由)」「Courageous(挑戦する勇気)」です

最後に日本の女性たちへのメッセージを一言お願い出来ますか?

ソンジュ:日本の女性たちは韓国同様、男社会の中で頑張っていると思います。でも、まだまだ頑張り足りないと感じている部分もあるし、これから先も女性の社会的向上の為にもっと声を大にして主張して欲しいと思っています。


金聖珠(キム・ソンジュ)◎ソンジュグループ&MCM ホールディング創立者、会長、チーフ・ビジョン・オフィサー。ドイツのMCMホールディング会長を兼任している。1997年、世界経済フォーラムで「明日のグローバル・リーダー」に選出、2009年「世界論理フォーラム・ビジネスアワード」を受賞、2012年「フォーブス・アジア ビジネスウーマンのトップ50」「熱意のあるアジアのCEOの50人」に選ばれる。2014年より韓国赤十字の代表を3年間務め、2015年には「大英勲章第4位」を授与される。

構成=賀陽輝代 写真=藤井さおり

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