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2018.04.03 08:00

ネットフリックスが支える「ドキュメンタリー映画」の新潮流

Denys Prykhodov / Shutterstock.com

Denys Prykhodov / Shutterstock.com

ドキュメンタリー映画の製作はコストが高く、意図したストーリーに仕上がらないケースもある。また、発表の場が限られていることも従来からの課題だった。その状況を打破するのがネットフリックスのようなストリーミングのプラットフォームだ。

2018年に70億ドルから80億ドル(約8500億円)をオリジナルコンテンツに投資するネットフリックスのおかげで、良質なドキュメンタリー作品に出会うチャンスが以前よりも増えている。

その最新作の一つにあげられるのが「ワイルド・ワイルド・カントリー」だ。この作品は1980年代にカルト集団を率いるインド人グルが、オレゴンの荒野に建設した理想郷をテーマとしたドキュメンタリー。地元住民との摩擦やスキャンダルなどを克明に描き、堕ちた宗教家の足跡をたどっている。

監督のチャップマン・ウェイとマクレーン・ウェイのコンビは70年代の貧乏野球チームを描いた「バタード・バスタード・ベースボール」でも知られている。

ネットフリックスのドキュメンタリーにかける情熱は、同社のバイスプレジデントのLisa Nishimuraが支えている。彼女の努力により「殺人者への道」のようなヘビーなテーマの作品も、時間や表現の制約を受けずに製作することができた。

Nishimuraが送り出したもう一つの名作ドキュメンタリーにあげられるのが「13th -憲法修正第13条」だ。タイトルの13thは米国憲法の奴隷制廃止条項を意味し、この作品は米国で廃止されたはずの奴隷制度が、今もなお形を変えて生き残っていると指摘している。

監督のエイヴァ・デュヴァーネイはこの作品で英国アカデミー賞を受賞した。「13th -憲法修正第13条」のような極めて重いテーマの作品に道を開いたのは、ドキュメンタリー映画界におけるネットフリックスの大きな貢献の一つといえるだろう。

「人々に適切なアクセス機会を与えれば、ドキュメンタリー作品は必ず観客を引き込んでいく。ドキュメンタリーには映画業界の人々が思っている以上のパワーがある」とデュヴァーネイは過去のインタビューで述べていた。

編集=上田裕資

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