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2018.04.09

「便は茶色い宝石」 腸内環境デザインで健康寿命100歳を目指す

(左から)メタジェン取締役副社長CTO 山田拓司、代表取締役社長CEO 福田真嗣、ヒューマノーム研究所創立者 井上浄




次のステージは、腸内環境をコントロールすること


井上:今、腸内細菌が注目されている理由としては、近いうちに我々の生活を劇的に変化させる可能性を感じられる領域だからなのかなと思っていて。メタジェンが持っているコア技術「メタボロゲノミクス」は、他にはない特長があるんですよね。

山田:腸内にどんな細菌がどれほどいるかを調べる「メタゲノム解析」と、その細菌によって産生される代謝物質を調べる「メタボローム解析」を組み合わせた、「メタボロゲノミクス」という解析技術を確立しました。

これによって、腸内環境のコントロールまで視野にいれて解析ができるようになりました。腸内環境と健康状態、それから食事など日常生活との相関も紐解いていけると考えています。

福田:いろいろな人の腸内環境を分析していて気がついたのですが、健康な人なのにもかかわらず、その人の腸内では、疾患に関わることが既にわかっている腸内細菌叢由来の代謝物質がたくさん作られている時がありました。「え、この人大丈夫?」って思ったんです。でもその人、本当に健康なんです。

どういうことかというと、疾患は腸内細菌叢の乱れだけで引き起こされるわけではないと考えています。近年増加している疾患の多くは、人の遺伝子や生活習慣、さまざまなパラメーターが絡みあって発症すると考えられます。その多様な要因の中で、腸内細菌は重要な一因を担っていることが分かってきました。

井上:複合要因ではあるけれども、腸内環境の改善は確実に疾患リスクを減らす一つの方法であるということですね。

自分の腸内細菌叢が健康なのかどうか、よく聞かれると思うんですけど。ズバリ、理想のバランスってあるんですか?

山田:僕が考える最強の腸内細菌叢バランスみたいな話をし始めると日が暮れるのでやめておきます。でも、答えは1つじゃないことは確か。スポーツが好きな人って、最強のチームを考えるじゃないですか。サッカーだったら、フォワードはメッシとか。

それと同じで、僕の腸内では、「バクテロイデス門の細菌をメインにしよう」「ビフィズス菌をもっと定着させようかな」みたいに、個人にとっての理想をデザインすることはできる。

福田:「個人の理想」というのが重要なポイントです。メッシは、サッカーだから輝ける要素じゃないですか。サッカーっていう環境なんですよ。これ、野球だったらどうだろうっていう話で。理想の細菌叢を聞かれたときに逆に聞きたいのは、「あなたは今サッカーしているんですか? 野球? テニス?」ということ。これによって、当然選ぶ人材は変わってくる。

井上:なるほど、面白い。自分にっての理想の腸内細菌叢をデザインできれば、もしかすると健康寿命100歳っていうのは意外と簡単に達成できるかもしれないね。

福田:少なくとも、病気を減らすことはできる。われわれのテクノロジーなんてなくても、すでにみんな便から健康状態が分かることは知っているはず。でも、友達と便の話なんてしないから、自分の便の状態が正常なのかどうかさえ知らないじゃないですか。そこで、われわれがやらなければいけないと思っているのは、健康意識が高くない人でも健康になれる、「健康を意識しない健康社会」。

井上:何気ない日々の生活の中で、自分の腸内環境がわかるようにすると。
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構成=ニシブマリエ 写真=藤井さおり

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