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奥ジャパンCEO マット・マルコムソン

地域での文化体験やアクティビティを旅行に組み込んだ「アドベンチャーツーリズム」が世界的なブームだ。日本でも外国人CEOによる旅行会社がいち早く取り入れ、地域の旅行業を変えようとしている。


2017年の訪日観光客は2869万人の過去最高を記録した。アジアに加えて欧米からの観光客も順調に増える中、「アドベンチャーツーリズム」と呼ばれる自然や文化の「体験」にフォーカスした滞在型の旅行スタイルが注目されている。

中でも、英国発の熊野古道をベースに立ち上げた旅行会社「奥ジャパン」は、アドベンチャーツーリズムをいち早く取り入れ、日本各地の魅力を心ゆくまで味わえる個性的なツアーで、支持を集めている。

紀伊半島の熊野三山を参詣する「熊野詣(くまのもうで)」は日本における観光の起源の一つ、と言われる。熊野古道はいま、外国人にも人気の観光スポットだ。奥ジャパンの主力ツアーの一つ、3泊4日の熊野古道ウォーキングの総距離は51km。地元の宿で食べ物や温泉を楽しみつつ、古の信仰が息づく絶景の森を自分の足で歩けるのが魅力だ。


熊野古道のウォーキングツアーは、3泊4日で51kmを歩く旅のほか、4泊5日で66km歩く旅や、10泊以上の旅まで豊富な種類がある

丁寧で分かりやすい地図と電話で24時間サポートが受けられるものの、ガイドはついていない。日本語も日本文化も分からない外国人には少々ハードルが高そうだが、人気が高い。

アドベンチャーツーリズムの特徴は、「アクティビティ」「自然」「異文化体験」の3要素が含まれ、同地域に数日以上滞在すること。欧米を中心に人気が出始め、1990年にはアドベンチャーツーリズムを提供する旅行会社などがメンバーになり、アドベンチャー・トラベル・トレード・アソシエーション(ATTA)が設立された。

毎年開催される国際サミットで、そのコンセプトを世界に広げている。近年はSNSやGPSの普及などが要因となり、急成長している市場だ(2012年現在の世界の市場規模は約30兆円)。

日本でも北海道経済産業局が17年度にアドベンチャーツーリズムの海外向けマーケティング戦略を策定すると発表し、注目を集めた。

アドベンチャーツーリズムと一口で言っても、本格的な登山やダイビングなど特別な技能やライセンスが必要な「ハードアドベンチャー」と、ウォーキングやシュノーケリングなど誰でも気軽にできる「ソフトアドベンチャー」がある。ここ数年で特に注目されるのは「ソフトアドベンチャー」で、家族連れや一般人の間で人気が高まってきた。

四国八十八ヶ所の寺院を歩くお遍路の旅、石川県能登半島の海岸線に沿って漁村をサイクリングで巡る旅、懐石料理のルーツを求めて岐阜県飛騨古川で昔ながらのかまどを使った料理を作ったり、富山県五箇山で山菜採りしたりする旅─。奥ジャパンの企画はソフトアドベンチャーが中心で、異文化体験の色合いも濃い。同社によると客数は右肩上がりに増加、17年は3000人を超えた。

奥ジャパン誕生まで

奥ジャパンのマット・マルコムソンは、18歳で初来日し、奈良県、宮崎県、東京都で計約10年過ごした後、05年に英国に帰国し奥ジャパンを設立。当初はヨーロッパに来る日本人向けのツアーガイド業をしていた。翌年には日本に来る外国人向けのインバウンド事業に転換。自身がアウトドア・アクティビティを好きだったことから、アドベンチャーツーリズムを取り入れたツアーを企画し、ホームページ作成、営業、ガイドまでひとりでこなす小さな会社だった。

06年に米エバーノート共同創業者のステパン・パチコフ氏を案内したのが転機になった。正月に長野県飯山市の野沢温泉でスキーをしながら、「ひとりで全部やっていたら、1年間で何人案内できる? 会社を大きくしてガイドを募集するべきだ」と言われ、会社を大きくしようと決意した。


従業員は25人。多国籍チームでツアーの企画開発、運営から、顧客のサポートを行う

ニッチなビジネスだが、訪日観光客数、特に個人旅行の増加で裾野が広まった。訪日観光客数は、11年の東日本大震災で大幅に減少。その後は、堅調に回復傾向が続き、ここ数年では、アジア地域の経済成長を背景にした旅行者の増大や円安傾向、ビザの要件緩和や政府による訪日促進活動が功を奏し、飛躍的に増えている。

同時に、自由度の高い個人旅行が増え、訪問先も都心以外へと多様化した。地方に滞在することが多いアドベンチャーツーリズムが多くの旅行客の選択肢に入るようになった。

この記事は「Forbes JAPAN 2018年04月号」に掲載されています。定期購読はこちら >>

文=フォーブス ジャパン編集部 写真=井上陽子

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