「習慣化」の罠 不感症から抜け出す身体感覚の取り戻し方

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私はそこで「セルフマネジメント」に出会い、自分自身を内側からマネジメントする方法学んだことで、多くの良い変化があった。外に向きすぎている意識を自分の内側に向け、「思考=頭で考えること」だけでなく感情や身体感覚に意識を向けることの大切さを知るとともに、実は自分の体が本当に多くの情報を捉えていて、実は体の内側から多くのシグナルを自分自身に伝えてくれていることも体感できるようになった。

決してスピリチュアルなものではないし、訓練は必要だが難しいことをするわけではない。そして、日常の中で常に使えるとても実践的なものだということも体感できた。身体感覚や感情に気づくことが、自分の身体も心も良い状態に保つための一つの大事な要素だということが分かったのだ。

例えば私は、普段無意識にやっている習慣や環境を少しだけ変えることで、身体感覚や感情を取り戻していった。つまり、「意図的にいつもと少し違うことをやってみる」だけだ。違う道順で大学院や仕事に行ってみたり、公園で15分休んでみたり、レストランや売店のおばちゃんと雑談をしてみたり、今まで目に入らなかったものを探してみてみたり。

その中で、「いつもと違う体験(目や体に入るもの)は何か」「その違いの中でどんなワクワクや他の感情があったか(恐れや不安などでも良い)」「その時にどんな身体感覚を持ったか」など、何でも良いから、そこでの身体感覚・感情を覚えておく。そこからどんな気づきがあったか、普段との違いから何が得られたかを内省することで、少しずつ感覚や感情を取り戻していった。

これは全く難しいことではないし、短い時間でできる。コツは、意図的にいつもと違うことをやることであり、意識や注意をいつもと違うところにおいて、そこから自分の内側にどんな違う体験があるのかを見るだけだ。訓練が必要なので、数回やるだけでマスターできるわけではないし、うまくできないことも多々あるが、やり続ける中で感覚的・感情的が少しずつ戻ってくる。

ちなみに、ドラッカースクールのセルフマネジメントのクラスでは、少なくともこのエクササイズを1ヶ月は続ける。そして毎日、自分自身の変化のログを取り、毎週レポートにまとめ、自分にどんな変化が起きたのか、頭で考えるのではなく、自分のどんな感覚や感情に気づいたのかをアウトプットしていく。

これが私にとって、「感覚」や「感情」を取り戻し、自分の内側の声を聞く=不感症を改善していくための基礎練習になった。

多くの人に話を聞いて本当に感じたが、「自分の外ばかりに意識が向いていて、自分の内側=身体感覚や感情が抜け落ちている」人が非常に多い。しかし、自分自身の感覚や感情のことをちゃんとわかっていない人が、他人の感情や感覚がわかるはずもない。

リーダーシップやマネジメントの基本は他者理解だが、その基本にも立てない。そういった意味でも、自分の内側を見る練習と、不感症から抜け出すことは本当に大事なことだと思う。

文=稲墻 聡一郎

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