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2018.04.02

自動運転車死亡事故、ウーバーが続ける「沈黙」という最悪の対応

AlesiaKan / Shutterstock.com

米アラスカ州のプリンスウィリアム湾で1989年、石油輸送船エクソン・バルディーズ号が25万バレルもの原油を流出させた事故では、エクソンの対応が危機管理の悪い見本となった。同社は評判を損ねただけでなく、石油探査に対する世間の態度を硬化させることにもなった。

ニューヨーク・タイムズ紙は、エクソンの失敗の主な要因として、「企業は非常事態に対応するだけでなく、国全体、または全世界が注目する中でそれに対応しなくてはならないという点」を軽視したことがあると指摘した。

ウーバーは今、同じ失敗をしている。

ウーバーの自動運転車が先月起こした死亡事故で、歩行者をひいた車は多くのセンサーを搭載していた。つまりこの事故は、これまで起きた中で最も詳細な記録が残る交通死亡事故の一つだったはずだ。しかし、これまでに公開されたデータは、ドライブレコーダーで撮られた非常にローテクな荒い映像のみ。さらに、その動画を公開したのはウーバーではなく、地元警察当局だった。

ウーバーは当然、警察などの捜査機関に協力するより他に選択肢はない。しかし同社経営陣は、この事故に大きな関心を寄せるその他の人々に対しては、幾つかのお悔やみツイートを除き、沈黙を保っている。これではいけない。沈黙は、ウーバーの利にならない臆測をあおるだけだ。

例えば、シンギュラリティ大学のネットワーク&コンピューティング・システム学科長、ブラッド・テンプルトンは、公開されたわずかな情報に基づき「ウーバーにとって状況は良くなさそうだ」と暫定的に結論づけている。

他の専門家たちも、「ライダー(LiDAR)」センサーシステムが歩行者を検知できなかったことに驚きを表明。デューク大学のミッシー・カミングス教授(機械工学・材料科学)は「歩行者はこの時点で、間に合うように車両に検知されるべきだった。暗闇や影は、この分野でのライダーの障害物検知能力になんら影響を与えないはずだ」と言う。

カーネギーメロン大学のラージ・ラジクマール教授(計算機科学・工学)はロイター通信に対し、もしライダーが機能しなくても「レーダーが(ライダーの)死角をカバーできるはずだ」と述べた。
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編集=遠藤宗生

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