ビジネス

2018.04.02

4次元で考える、オープンイノベーションの鍵は「過去」にあり

イラストレーション=尾黒ケンジ


このエピソードで、すっかり弘道館ファンになった僕は、弘道館の21世紀版「弘道館2」を県に自主提案。方針は過去からそのまま引き継ぐ。校舎は復元せず、イベントベースで県内各所でpop-upの藩校にする。授業はネットでも配信。講師陣は各界で活躍する佐賀ゆかりの先輩たちに依頼し、21世紀教育を行う、というもの。維新150周年という時期も味方し、見事採用され、日本初の、藩校復活型アクティブラーニングとして、毎月授業を実施中です。

3次元=現代の生きている人々だけじゃなく、時空を超えて4次元で、歴史、先人、偉人たちと組んだほうが絶対面白くなる。そんな、この世にもういない人たちと組んだ事例、つまり「過去」とのオープンイノベーションは、まだまだあります。

たとえば塩麹。ブームの火付け役は、ピンチに陥ったときに、江戸時代の文献からヒントを得たそう。つまり、業界のご先祖様と組んだわけです。また、バルチック艦隊を破った秋山真之は、地元、村上水軍の戦略をヒントに、日露戦争を勝利に導きました。これも地元の先人たちとのオープンイノベーションですね。



それって「温故知新」なんじゃないの?と思われる方もいそうですが、知新だと「知る」までしかない。やらなくっちゃ、事は起こりません。そして何より、「4次元」の「オープンイノベーション」のほうが、パッとするでしょう?

このやり口を実践すると、3つのメリットがあります。

その1、世界でオンリーワンになれる。歴史はアイデンティティー。そこにしかないストーリーがある。つまり、歴史と組んで、現代と地続きにすれば、世界でもその土地、その企業でしかできません。その2、誇りがもてる、かつ反論が少ない。なぜならば、そもそもそこでやっていたことだから、風土にも、自分たちにも刻まれている。だから、プロジェクトが進めやすい。その3、お金がかからない。組む予算はほぼゼロ。

「オープンイノベーションは日本では全然進まない」とか、兎角言われがちですが、「過去」となら、やれそうじゃないですか? みなさんもぜひ、お試しあれ。時空を超えて手をつなぐのは、とても楽しいですよ。そして、我々がやったことを次は未来の人が見つけて、また4次元でオープンイノベーションがなされたら。

それは最高な仕事になりますよね。


倉成英俊◎電通Bチームリーダー。自称21世紀のブラブラ社員。気の合う人々と新しい何かを生むことをミッションに、公/私/大/小/官/民 関係なく活動中。趣味がないのが悩み。

文=倉成英俊

この記事は 「Forbes JAPAN ニッポンが誇る小さな大企業」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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