日本企業が過去の教訓を生かすとき
適温相場から高温相場に移行するので、株価の変動性も以前より上昇するだろう。今回は、株価の変動率の上昇に伴って上昇するVIX指数(恐怖指数)が大きく上昇したことが、相場の不安感を助長したという側面がある。今後は投資をする際の銘柄感覚差が広がることが予想される。要するに、よりよい会社に投資をできるかどうかが大事だということだ。
とはいえ、それほど心配には及ばない。なぜならば、日本の上場企業は過去最高の強さを誇っているからである。日本の上場企業の経常利益の総額は1990年のバブルのピーク時の2倍である。
またバブルのときは莫大な借り入れをし、それで株式投資や不動産投資をしてその売買益も経常利益に含まれていた。当時はそれを「財テク」と呼んだ。いまや死語だが、当時は財務担当者にとって当たり前のことで、金利5〜6%で調達をして株式で不動産投資をしていた。
現在はそのような財テクをしている会社はほとんどなく、日本の経常利益のほとんどが本業の利益である。無駄な借入金はほとんどなく、過去最高の現金を積み上げている。
加えて中国やアメリカを中心にイノベーション企業が成長をし、それらの企業がサーバなどへ莫大な設備投資を行っている。設備投資の機械やロボットの発注先は日本が多い。日本は世界を変えるようなビジネスモデルを生み出すことは苦手だが、そのアイデアを作り出す会社に“武器弾薬”を供給する国として新たな成長ストーリーを作り始めた。
IoTの普及によって莫大なセンサーが必要となり、TDKやローム、京セラなどが急激に業績を回復しつつある。ソニーやパナソニックが、総合電機メーカーからそれぞれCMOSセンサー、電池の製造に特化し始め、巨大な部品メーカーに変わりつつある。
そのような転換の最中であり、今回、アメリカの金利上昇で米国株に連られて日本株が下落をしても、それほど悲観するには及ばないのである。
就任早々、試練を迎える米連邦準備制度理事会のジェローム・パウエル議長。
むしろ、今回の株価の下落によって行き過ぎた株価が調整され、いまの息の長い景気サイクルがさらに長生きできる可能性が高い。今回の株価調整がなく、株式市場が一本調子に上昇したほうが下落したときのマグニチュードが大きく、株価の下落の大きさが実体景気のよさを吹き消す可能性もあった。リーマンショックでそれが起きたように。
ただ何度強調してもしすぎではないが、ゴルディロックス相場が終了した可能性は高い。だからこそ、株式投資をする際の銘柄選別は特に重要になるだろう。
よい会社にじっくり投資するという戦略は概ね有効な戦略だが、これからは特にそれが有効になるのではないか。